青森県南部地方に伝わる刺し子技法を菱刺しといいます。菱刺しでは模様サイズを「横の目数×縦の段数」で表します。今回は、藍染め糸で「30目×15段」の網代模様と「22目×11段」の数種類の菱模様を施したピンクッションのご紹介をいたします。模様もつ意味や由来について綴ります。
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菱模様
藍染糸で施しました。
菱刺しでは模様サイズを「横の目数×縦の段数」で表します。
「網代」の模様サイズは「30目×15段」、その他の菱模様のサイズは「22目×11段」になります。
「22目×11段」の模様は「矢の羽」「猫の目」「なしの紋こ」「四つ菱」「九つ菱」「石畳」「こま」「鱗紋」など、全て異なる模様を施しました。
裏面です。
表面と逆模様となっており、「矢の羽」や「石畳」などはお分かりになりやすいのではないでしょうか。実際、「石畳」には、こちらを施した模様もございます。
いかがでしょうか。裏面ならではの味わいがございますよね。
一部模様のご紹介をいたします。
網代
「網代」(模様サイズ「30目×15段」)です。
「網代」とは杉や檜、竹、葦などを薄く細長く加工したものを、縦横や斜めに交互に編んだものをいいます。
「網の代わり」を意味し、竹や木を編み、網の代わりに川に立てた、魚を捕る為の仕掛けに由来します。
矢の羽
「矢の羽」(模様サイズ「22目×11段」)です。
矢を横から眺めた様子を表した模様です。
矢は、射られると真っすぐに進むことや、「的に当たる」という意味から、縁起柄とされています。
猫の目
「猫の目」(模様サイズ「22目×11段」)です。
「目」のことを方言で「まなぐ」というので、「ねこのまなぐ」と読みます。
こちらの模様は、刺していますと、どこか見られている感覚を抱きます。
なしの紋こ
「なしの紋こ」(模様サイズ「22目×11段」)です。
四つ菱
「四つ菱」(模様サイズ「22目×11段」)です。
四つの菱が並んだ模様です。
菱形は生命力や繁殖力の強いヒシの葉、または実を由来とし、「子孫繁栄」「無病息災」「魔除け」「厄除け」を意味します。
九つ菱
「九つ菱」(模様サイズ「22目×11段」)です。
九つの菱が並んだ模様です。
石畳
「石畳」(模様サイズ「22目×11段」)です。
「石畳」は、正方形または長方形を色違いに並べた模様です。
どこまでも途切れずに続く様子から、「永遠」「発展拡大」「繁栄」の意味を持ちます。
菱形の中に施された様子は、菱刺しならではかと思います。
「石畳」は敷石を由来とし、平安時代には有職文様の「霰文」と呼ばれ、江戸時代に歌舞伎役者である佐野川市松が衣装に使用したことから、「市松模様」として広く親しまれるようになりました。
こま(独楽)
「こま(独楽)」(模様サイズ「22目×11段」)です。
鱗紋
「鱗紋」(模様サイズ「22目×11段」)です。
「鱗文」とは、三角形が交互に入れ替わる文様をいいますが、こちらは菱刺しならではの模様ではないでしょうか。
魚や蛇、龍の鱗を由来とし、蛇や蝶を連想させ、脱皮を表し、厄を振り払って進化する、再生するという意味を持ちます。
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ピンクッション
ピンクッションに仕立てたものがこちらです。
サイズは、縦約6.2cm×横約9.2cm、高さ約2.5cmです。
布は、1cm角 縦約11目×横約11目の白い麻布を使用しています。
詰め物は羊毛を使用することにより、針が錆びない工夫をしております。
上側です。
周りは同色の藍染め糸でかがっています。
下側です。
ピンクッション右側の端には、左半分の菱模様を四つ施しています。
ピンクッション左側の端には、右半分の菱模様を四つ施しています。
針を刺した様子です。
お裁縫箱に入れた様子です。
季節の花を挿した青の花瓶と一緒に飾ってみました。
青でまとめるとどこか神秘的な雰囲気が生まれるように思います。
糸は、一色のみを使用することで、青色の印象がより引き立ち、菱刺し模様もはっきりと表現できたのではないかと思います。
藍染めには、消臭や抗菌など、清潔を保つ効果がございます。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回の作品は、「菱刺し模様を感じて頂けるピンクッション」であることに心を配りながら制作しました。
白布にはっきりめの藍染め糸一色を使用することで模様が引き立ち、菱刺しならではの模様を多く施すことで、「菱刺しらしさ」が表現されたのではないかと思います。
菱刺し模様の柔らかさや、菱刺し特有の名前の面白さなどを感じて頂けましたら嬉しいです。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
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