青森県南部地方に伝わる刺し子技法を菱刺しといいます。
さて、2021年は丑年ですね。今回は丑年に因んで制作した南部菱刺し「牛の鞍(べこのくら)」のピンクッションのご紹介をします。また、牛の持つ縁起の良い意味や牛にまつわる言い伝えについて綴ります。
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菱刺し模様「牛の鞍」
こちらは菱刺し模様「牛の鞍」です。
東北地方では方言で牛のことを「べこ」といい、こちらは「べこのくら」とよみます。
現在は、農業にも機械を用いますが、昔は牛に鞍をつけ、綱で鞍と農具を結び、牛が曳いて田畑を耕したり、鞍に荷車を取り付けて農具や農作物を運んでいました。その鞍を表した模様です。
こちらは裏面です。
表面の糸の刺されている部分が裏面の布の部分、裏面の糸の刺されている部分が表面の布の部分となっており、表面と裏面は逆さ模様となっています。
表面、裏面、それぞれに味わいがございますよね。裏面を表面に模様として施しても美しいです。
「牛の鞍」にはサイズが異なるものなど、いくつかの種類がございます。
こちらでも「牛の鞍」をご紹介していますので、よろしければご覧ください。
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誠実さから十二支に加えられた牛
「十二支」とは、子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の総称をいいます。
「十二支」は、もとは年月日や時刻、方位を表す記号でしたが、覚えにくかった為、身近な動物が割り当てられました。
「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」と、「鼠・牛・虎・兎・龍・蛇・馬・羊・猿・鳥・犬・猪」の漢字が異なっているのはこの為です。
昔から、牛は、重い荷物運びや農作業の支えとなる大切な存在でした。その仕事に一所懸命な姿から、粘り強さや誠実さ、力強さの象徴とされ、縁起の良い動物として「十二支」に加えられました。
この「十二支」と「十干」(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)を組み合わせたものが「干支」です。
十干の「干」と十二支の「支」から「干支」となるのですね。
私たちが普段使っている「干支」とは、正確には「十二支」のことをいい、少し意味が異なるのです。
神様の使者とされる牛
学問の神様といわれる菅原道真公には牛にまつわる言い伝えが多くございます。
道真公は承和12年(845年)6月25日の丑の年に、学問の家系である菅原家に生まれました。
学問の才能に恵まれた道真公は学者として大成しますが、また、政治的手腕も高く、宇多天皇に重用され、やがて左大臣に次いで高位な役職である右大臣にまで昇進します。
ところが、宇多天皇から重用されたことや、学者の家柄でありながら高い役職に就いたことなどから、周りの貴族たちに不満が生まれます。
そして、無実の罪を着せられた道真公は、都から大宰府に流されてしまうのです。
その途中で刺客に狙われた際、都にいた頃に大切に育てたもののどこかへ行ってしまっていた牛が現れ、道真公の命を守ったという言い伝えがあります。
そして、大宰府に流されて2年後の延喜3年(903年)2月25日の丑の日に道真公は亡くなりました。
道真公が望まれた通り、お骨は都へ返さず、牛の思うままに柩を曳かせ、うずくまり動かなくなった場所にご墓所が定められました。
その場所が現在の太宰府天満宮であり、天満宮にある牛の像の殆どが座った姿勢の「臥牛」となっているのです。
道真公の死後、落雷で命を落とす者など、道真公を太宰府へ流した人々の間で災いが続いて起こったことから、道真公は「雷や天候を司る天神(雷神)」といわれるようになりました。
雷は農耕にとって重要な雨と関わりがございますよね。その雷を祀る為、人々は農作業の支えとなる大切な存在である牛を捧げました。
また、牛の勤勉さは道真公の教えにも通ずるものがあり、牛は神様の使者とされました。
これらのことから天満宮には臥牛が祀られるようになったのです。
「牛の鞍」ピンクッション
ピンクッションに仕立てたものがこちらです。
25番刺繍糸を6種類使用しています。
Anchor905番、Anchor904番、オリムパス845番、Anchor393番、オリムパス815番、Anchor899番です。
サイズは縦約5.7cm×横約8.2cm×高さ約2.5cmです。
周りは同色の糸であるAnchor904番でかがりました。
針を刺した様子です。
お裁縫箱に入れた様子です。
丑年の元旦に北海道長沼町の農家の牧場で白黒の牛柄の羊の赤ちゃんが生まれ、「丑年の奇跡」といわれているようです。
こちらは牛でも羊でもなく犬の置物ですが、白黒の牛柄で可愛らしいので、一緒に飾ってみました。
おわりに
丑年に因んで制作した南部菱刺し「牛の鞍」模様のピンクッションのご紹介をしましたが、いかがでしたでしょうか。
「紐」には「丑」が使われていますよね。このことから、「丑」は「紐」に通じ、「結ぶ」や「掴む」という意味もあるようです。
2021年は、辛丑(かのとうし)の年です。辛丑は転換期に当たるとされます。
転換の時は、終わりを迎えると同時に始まりの時でもありますよね。
現在、世界的に大変苦しい時ではありますが、人との結び、繋がりを大切に、明るい未来を描きたいですね。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
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