水とは清らかさや無限、災いを流す意味を持つ、神秘的な存在です。今回は水の流れる様子を表した「流水文様」のひとつである「観世水」のアレンジ模様を施した南部菱刺しのピンクッションのご紹介をします。「流水文様」の種類や由来について綴ります。
スポンサーリンク
流水文様
古来、水は心身を清め、穢れを祓い、苦難や災いを流し去るものとされてきました。そして、その流れは人生に例えられます。
「流れる水は腐らず」とは、溜まらずに流れている水は新鮮で清らかであり、腐らないことから、いつも少しずつでも努力を続けていれば、前へ進んでゆけるという意味を持つ諺です。
このような、水の流れる様子を表した文様が「流水文様」であり、時代が流れても、形を変えながら流れ続ける、未来永劫の幸せや無限を意味する縁起の良い文様です。
「流水文様」には、数条の平行線がS字状に連なる幾何学的なものと、絵画的に表現されたものがございます。
こちらは「流水文様」のひとつである「観世水文様」を菱刺し風にアレンジした模様になります。
布は、1cm角約 縦15目×約12目の麻布を使用しています。
糸は、上から、COSMO162、COSMO163、COSMO213、COSMO733、COSMO253、COSMO254、COSMO167の7種類を使用しました。
スポンサーリンク
「流水文様」の種類と由来
「流水文様」には、「観世水文様」の他にも種類がございます。一部「流水文様」の種類や由来について綴ります。
観世水文様
流水が渦を巻いた様子を表現した文様です。
能楽の観世流家元である観世太夫が定紋に用いたことに由来します。
観世家の人々が使用していた井戸の水が、地下水の流れの関係で渦を巻いていたことからこの文様が作られたようです。
竜田川文様
秋風に吹かれた紅葉が川に落ち、流れてゆく様子を表した文様です。
奈良県を流れる竜田川が由来です。竜田川は、昔から紅葉の美しさで知られ、和歌にも多く詠まれてきました。
菊水文様
菊の花に流水を配した文様です。
由来は中国河南省を流れる河川の支流です。
中国には、川の崖上の菊から零れた露を飲んだ者は長生きしたという逸話があり、菊は延命長寿の媚薬とされています。水辺の菊は神秘的な存在のようです。
扇流し文様
流水に扇が流れる様子を表した文様です。
室町時代に始められた、白扇に詩歌や書画を書いて川に流す行事を由来とします。
扇は末広がりの形状から縁起が良いとされました。また、古来、扇には神が宿ると信じられてきました。
観世水のピンクッション
ピンクッションに仕立てたものがこちらです。
サイズは約 縦5.3cm×横9.5cm、高さ約2.5~2.7cmです。細長い印象です。
詰め物は羊毛を使用することにより、針が錆びない工夫をしております。
周りはCOSMOの254(同色の糸です)でかがりました。
下側です。
針を刺した様子です。
お裁縫箱に入れた様子です。
図案は、濃い色(COSMO167)側を下側として制作しましたが、向きが逆でもバランスが取れる印象です。上下はお好みでお使いいただけるかと思います。
刺し子やお裁縫、刺繍など、日々の手芸のお供にいかがでしょうか。
初夏の花であるクレマチス、オルラヤと一緒に飾ってみました。
クレマチスの青紫とピンクッションの青がよく似合い爽やかです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
水は、人々の生活を支えるものであり、人の身体の半分以上を構成するものでもあります。また、神事にも深い関わりのある存在です。
身の回りに溢れるようで、人為の及ばない尊さがあり、一瞬一瞬で姿形を変えながら、悠久の時を変わらずに流れ続ける姿に刹那と永遠を感じ、水はどこか不思議な存在であるように思います。
また、水の流れは人生と重なり、柔軟な姿など、学ぶべきことも多くあるのではないでしょうか。
今回は「流水文様」のひとつである「観世水」のアレンジ模様を施したピンクッションを制作しましたが、デザインにより、水に関する模様は広く奥が深いように思います。
皆さまも水が持つ深い意味や水にまつわる神秘を感じてみてくださいね。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
スポンサーリンク
スポンサーリンク