青森県の伝統刺し子技法、南部菱刺しには動植物になぞらえた模様が多くございます。今回は、その中でも菱刺しの代表的模様といえる「雉子の足」を刺し連ねたピンクッションのご紹介をします。「雉子の足」の一部図案や縁起の良い鳥・雉についても綴ります。
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縁起の良い鳥・雉
雉は日本の国鳥であり、岩手県や岡山県の県鳥にも指定されています。
現在の壱万円紙幣の裏面には平等院の鳳凰像が描かれていますが、前の代の裏面には雉が描かれていました。このように、雉は日本人に馴染みが深く、縁起の良いの鳥なのです。
特にアルビニズムの雉、白雉は吉兆とされています。
長門国(現在の山口県西部)からアルビニズムの雉が献上されたことから、飛鳥時代の西暦650年から654年の孝徳天皇の代の元号が白雉でした。
「焼け野の雉子夜の鶴」とは、親の子を想う情愛の深さを表した諺です。雉は巣のある野が焼かれると、自らの命に変えても我が子を救い、霜の降りる寒い夜、鶴は自らの羽で我が子を覆い温めることに由来しています。
また、「父母のしきりに恋し雉子の声」という俳句は、松尾芭蕉が高野山参詣の際に、互いに呼び合って鳴く雄雌の雉の声を聞き、亡き父母を偲んで詠んだものです。
このように、雉は、家族愛の象徴とされているのです。
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雉子の足
菱刺しには雉の足跡にちなんで名前がつけられた「雉子の足」模様がございます。
「雉子の足」とは小さな菱模様が並び、そこから線がでている模様です。
菱の枠のつかない模様を連ねて刺す刺し方を「地刺し」といいますが、こちらは菱の枠をつけずに、地刺し風に「雉子の足」を刺し連ねたものです。

「雉子の足」は、小さな菱と線の組み合わせにより、230種類以上の模様があり、菱刺しの代表的な模様といえます。
菱の枠のつかない状態の「雉子の足」模様を一部ご紹介したいと思います。
図案
こちらは横の目数が46目で、縦の段数が23段ですので、模様サイズは46目×23段となります。

模様サイズ58目×29段の「雉子の足」です。菱から出ている線の部分が先程の模様とはひと味違いますよね。
模様サイズ58目×29段の「雉子の足」です。こちらは線の部分が「矢の羽」模様のようになっており、また面白いです。
こちらは模様サイズ62目×31段の「雉子の足」です。模様サイズも大きく、多くの菱が並ぶ、大変華やかな模様です。
「雉子の足」ピンクッション
「雉子の足」を施したものをピンクッションに仕立てました。
サイズは、縦約4.9cm×横約6.9cm、高さ約2.2cmです。
糸は、オリムパスの2015番、Anchorの267番、Anchorの261番、オリムパスの287番、オリムパスの432番の5色を使用し、グラデーションをかけて刺しました。6本取りです。
布は、1cm角 縦約11目×横約11目の麻布を使用しています。
詰め物は羊毛を使用することにより、針が錆びない工夫をしています。
周りはオリムパス2015番でかがっています。
針を刺した様子です。
お裁縫箱に入れた様子です。
おわりに
今回は菱刺しの代表模様である「雉子の足」を刺し連ねたピンクッションのご紹介をしましたがいかがでしたでしょうか。
これまで何点かのピンクッションについて綴っておりますが、今回の模様が最も伝統的な菱刺しらしい作品になったかと思います。
私はアレンジ模様を考えて刺すこともございますし、刺繍要素を取り入れた作品の制作もしています。そうであるからこそ、受け継がれてきた菱刺しらしさも同じく大切にしてゆければと思います。
皆さまにも菱刺しらしさを感じて頂ければ嬉しいです。
この度もお付き合いくださいましてありがとうございました。
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