菱刺しは、青森県の南部地方に伝わる刺し子技法です。今回は菱刺しを施した名古屋帯のご紹介をします。帯の各部名称や柄の付け方、施した模様の図案、帯の種類について綴ります。
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名古屋帯
名古屋帯とは、帯幅約30cm、長さ約360cmの一重太鼓用の帯です。
手先部分と胴回りを半分に折って仕立てます。
柄付けは、全通柄、六通柄、お太鼓柄の3種類があります。
胴に巻く2週目の部分を縫ってしまわず、手先部分だけが半分に縫われたものを松葉仕立てといいます。
九寸名古屋帯
帯幅が九寸で、仕立て上がりが八寸の幅になる帯です。
帯芯を入れて仕立てます。
八寸名古屋帯
仕立て前から八寸の幅の帯です。通常は帯芯を入れずに仕立てます。
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帯の各部名称
今回ご紹介する帯が名古屋帯ですので、名古屋帯の図解イラストでご説明したいと思います。
帯の各部名称と参考にしている名古屋帯の基本サイズです。
青色の部分(お太鼓、垂先、胴の見える部分)に菱刺しを施しました。
帯の柄付け
帯の柄の付け方には、通し柄とお太鼓柄とがあります。また、通し柄には全通柄と六通柄とがあります。
通し柄
全通柄
総柄ともいいます。手先から垂先まで、帯全体に柄が入っている帯です。帯は胴に2回巻くので、下に巻かさる部分は見えなくなります。全通柄はその見えなくなる部分にも柄の入る大変贅沢な帯です。
六通柄
帯の六割に柄が入っている帯です。胴の下に巻く部分に柄が入らない帯です。
お太鼓柄
お太鼓部分と胴の前側にのみ柄がある帯です。
帯結び
関東巻き:右から左へ反時計回りに巻くもの
関西巻き:左から右へ時計回りに巻くもの
作品
仕立て前の菱刺しを施した帯地です。
帯を巻く時に擦れますし、厚みが出るので、胴の下に巻かさる部分を抜く刺し方が、菱刺し帯の場合は実用的なようです。
お太鼓、垂先、胴の見える部分全体に菱刺しを施したものですので、全通柄、六通柄、お太鼓柄、どちらにも当てはまらないかと思います。
菱刺し帯においては、柄の付け方は、全通柄、六通柄、お太鼓柄の、どちらにも属さない場合もあり、実際、これまで刺した帯で、八割に柄を入れた帯もありました。
両端の柄や色を非対称にすることで、関東巻きか関西巻きかにより、異なる雰囲気を味わえるように刺しました。
布はつきやの麻帯巾のものを、糸は、つきやの719番(10本取り)と白(10本取り)を使用しています。
仕立てたものです。お太鼓の部分です。
帯地幅のまま、端をかがって仕立てた八寸名古屋帯ですが、帯芯を入れて仕立てられたそうです。
通常八寸名古屋帯は帯芯を入れずに仕立てますが、実際は、帯地の質や硬さ、締める方の好みや締めやすさなどにより、仕立て方を工夫されるようです。
胴の前の部分です。
紺色、白色、ピンク色、淡いお色が濃いお色をそれぞれ引き立て合い、色彩がとても美しいですね。
図案
菱形が入れ子状に重なった「入子菱」です。
入子菱とは、一種類の文様が規則的に繰り返される割付文様のひとつです。
図案はこちらになります。
地刺しです。こちらも面白みのある模様ですよね。
図案になります。
帯の種類
名古屋帯以外の帯の種類について、簡単に綴ってみたいと思います。
丸帯
帯幅約68cm、長さ約4mのものを、2つに折って仕立てた帯です。
全体に柄のある全通柄で、表も裏も全て同じ柄であり大変贅沢な帯です。
重くて硬く扱いにくく高価であるため、昭和の初期から袋帯が主流となりました。
袋帯
帯幅約30cm、長さ約4mの帯です。
柄の表地と無地の裏地があり、縫い合わせて袋状に仕立てます。
裏地と表地が一枚の筒状となっているものを「本袋帯」といいます。
柄付けは、全通柄、六通柄、お太鼓柄の3種類があります。
京袋帯
袋帯との違いは、寸法の違いのみです。帯幅約30cm 、長さが360cmです。
京袋帯は一重太鼓用の帯です。
半幅帯
帯幅約15cm、長さ約350cmの帯です。
帯地を半分に折り、帯芯を入れて仕立てます。
小袋帯
帯幅15cm、長さ350cmの帯です。表と裏が袋状になっています。
合わせ帯
鯨帯や昼夜帯ともいわれます。
異なる生地を縫い合わせて芯を入れて仕立てた帯です。
江戸中期~明治までの女帯の主流だったようです。
角帯
帯幅約10cm、長さ約4mの男帯です。
幅約20㎝の帯地を2つに折り、芯を入れて仕立てます。
おわりに
菱刺しを施した名古屋帯について綴りましたがいかがでしたでしょうか。
こちらはとても大切な方へ向けたもので、お好きな模様、配色、糸や布など、全てを選んでいただき刺した帯でした。
お色や模様などから受ける深く清々しい印象は正しくその方を表すようで、作品と向き合う時ごとに抱いた、すっきりとした良い意味での緊張感を思い出します。
自分自身で配色や模様を選ぶ場合とはまた違う側面から菱刺しを勉強させていただいた、大変思い出の深い作品です。
寸法や種類など、帯について知りますと、菱刺し帯のイメージもより広がります。
制作するものは菱刺し作品ですが、菱刺しについてだけではなく、多方面の知識得ることが、いかに作品に生きるかということを、帯と向き合う毎に実感し、身が引き締まる思いがします。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
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