南部菱刺し模様を施したスマホケースを制作中です。こちらでは構想を立て、バックステッチを行う過程までについて綴りました。今回は菱刺し地刺し連続模様を施し、菱刺しで絵を描いてゆきたいと思います。図案もございますので、よろしければ前回の記事と併せてご覧くださいませ。

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菱刺しで絵を描く
糸などで縁取った枠の中を、菱模様や地刺し模様を刺して埋めることで、絵を描くことができます。
菱刺しで絵を描く場合の図案は、模様が引き立ち、刺しやすい図案であることが大切です。菱刺し模様や地刺し模様を施す部分のスペースをある程度広くとることで、模様が映えるように思います。また、細かすぎるものより大まかな絵の方が刺しやすく、模様もより引き立ちます。
a~eの部分に菱形の小模様と地刺し模様を施してゆきます。
バックステッチに使用した糸は、ログウッド染めの8本取りの糸です。今回は目が細かい布ですので、5本取りにして使用します。
菱形の小模様
aの部分にはこちらの菱形の小模様を刺し連ねます。
aの部分の一段目の布の横の目数を数えたところ、52目でしたので、菱形が3つ+2目入ることになります。
刺し始まりから刺し終わりまで、横の目数が等しい場合とは異なり、菱刺しで絵を描く際は、縁取った枠の中の横の目数は、段ごとにそれぞれ異なります。ですので、布の横の目数を数えながら、模様の入れ方を考えながら刺してゆきます。
aの部分の糸は、つきやさんの704番(撚りの強い化学染料染め刺し子糸、8本取り)を5本取りにして使用しました。
刺し始まりは、糸の端を表に出しておきます。表面に出しておくことで、裏面で糸が絡まることを防ぐことができます。
菱刺しでは基本的に刺繍枠は使用しませんが、目の細かい布を使用する場合は、刺繍枠で布を張ると目がはっきりとして刺しやすいので、私は布の個性に応じて使用する場合もあります。

bの部分にはこちらの菱形の小模様を刺してゆきます。
bの部分には、オリムパスの546番(化学染料染め刺繍糸、6本取り)を5本取りにして刺します。撚りの弱い糸ですので、撚らせながら刺してゆきますが、強く撚りすぎて布が縮みすぎないように心配りをしながら刺します。
aとbの部分に菱形の小模様を施しました。
いかがでしょう。あることに気づかれましたでしょうか。
実は、aの部分とbの部分は、逆模様になっているのです。
aの部分の裏面はこのようになっています。
bの部分の裏面はこのようになっています。
菱刺しでは、表面だけではなく、裏面の模様も大切にします。表面の糸の部分が裏面では布の部分となり、表面の布の部分が裏面の糸の部分となるので、模様が裏表逆に表現されるわけです。
つまり、今回は、aの表面の模様とbの裏面の模様が、aの裏面の模様とbの表面の模様が同じ模様となっているわけです。
同じ模様でも、色が変わるだけで雰囲気に違いが生まれ、菱の見え方も違ってくるように思います。個人的に感じることですが、今回の模様は、明度や彩度の高い色よりも、おさえたような落ち着いた色味の方が、菱形のひとつひとつの模様を認識しやすいように感じます。鮮やかな色彩は光を放つ感覚というのでしょうか。全体が広がって映えるように感じられるのかもしれません。このようなところが色選び(糸選び)の奥深さ、面白みであると思います。
石畳模様
石畳模様です。cとdの部分には糸を変えて(色を変えて)石畳模様を刺してゆきます。
cの部分にはケヤキ染めの糸を使用し、dの部分には待宵草染めの糸を使用しました。いずれも8本取りを5本取りにして刺しています。
亀甲模様
eの部分には亀甲模様を刺します。
糸は、オリムパスの632番、DMCの554番、オリムパスの166番の3種類を使用し、大きくグラデーションをかける感覚で刺しました。5本取りにして刺しています。
a~eまで刺し終えるとこのようになります。
次は、幹の下に地刺しを施し、大地を描いてゆきたいと思います。
菱の枠を外して、地刺しとして刺し連ねる
地刺しについての記事でも触れましたが、菱の枠のついた模様も、菱の枠を外して刺し連ねることで、地刺し模様として愉しむことができます。

菱の枠のついた状態では、このような模様なのです。こちらの菱の枠を外し、連ねてゆきますと、上のような地刺し連続模様ができあがるわけです。是非、上の地刺し模様から、こちらの模様を探してみてくださいね。
糸はオリムパスの453番を、5本取りにして使用します。
刺し始まりは、表面に糸の端を出しておきます。一段目を刺してゆくとこのようになります。
2段目はこのような感じです。

3段目です。
4段目を途中まで刺した状態の裏面です。
今回の模様の端のように段を真下におりる場合は、折り返す際に、糸に余裕を持たせて少したるませる感覚で刺します。そうすることで、布の張りすぎを防ぐことができるのです。
また、地刺しの場合の糸変えは、模様の途中では行わず、全て模様の端で行う場合も多いです。(どちらで糸変えを行うかは自由です。)その場合、画像のように、糸の端は並べて表面に出しておきます。このようにすることで、糸処理がしやすくなるのです。
全17段刺し終えますと、このようになります。
a~eの部分に菱刺し地刺しを施し、幹の下に地刺しで大地を描くと菱刺しの絵画が完成します。
菱模様、石畳模様(市松模様)、亀甲模様と、日本の伝統文様を集めましたので、どこか清々しい気持ちもいたします。見方によって葉や花、実、幹の模様にも見えてくるので何とも面白いです。
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思うこと
いかがでしょうか。菱刺しは広く知れた刺繍とも刺し子ともまた違う風情のあるものですので、菱刺しで描いた絵に触れる時、菱模様地刺し模様の集まりであると思うと、独特な味わいを感じます。
布目の感じなど、布の性質によって、初めに心で描いたものとはひと味違う形にできあがることもあります。例えば少しでこぼこしていたり、真っ直ぐ進めなかったりするのです。しかし、そのような個性が、布や糸の息遣いや想いを感じるようで何とも愛おしい気持ちがするのです。
次回はスマホケースを仕立ててゆきたいと思いますので、よろしければご覧ください。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
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