菱刺し

地刺し連続菱模様ピンクッション【秋草文様】【秋の七草】

菱模様
南部菱刺しとは青森県に伝わる伝統刺し子技法です。今回は枯れ野から着想を得て制作したピンクッションのご紹介をします。ススキが描かれた文様「秋草文様」や秋草文様を構成する「秋の七草」についても綴りたいと思います。

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枯れ野

菱刺し地刺し
黄色みある橙の糸を見た時、ふと冬枯れの野を思い、そちらから着想を得て刺しました。

 

枯れ野
とある車道沿いに広がっていた枯色のススキの群れです。

春の若草色や夏の深い緑色溢れる情景は美しいですが、緑を待つ季節の枯色もまた切なげで柔らかな美しさを持ち、なんとも味わい深いものがございます。

実際、江戸時代には枯れ野原を見に出かける「枯れ野見」が行われていたといいます。

遠くの木々の枝がほんのり暗めの紫色を呈しています。芽吹きの準備というのでしょうか、冬のおわり、春のはじまりを感じる光景のひとつです。

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秋草文様

ススキが描かれた文様には「秋草文様」というものがございます。

秋の七草」である萩、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗、尾花(ススキ)の他、りんどうなどの秋に咲く草花を混ぜて文様にしたものです。

 

秋の七草
写真ACからの写真です。

左から、萩、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗、尾花になります。

「尾花」とは、ススキの穂を動物の尾になぞらえて呼んだものです。

七草粥にして無病息災を祈る「春の七草」がございますが、「秋の七草」は美しく咲く花々を観て楽しむものであり、始まりは奈良時代でした。春の七草の始まりが鎌倉時代ですので、秋の七草の方が歴史が深いのです。

また、ススキは茎が空洞であることから、神が宿る場所といわれ、切り口が鋭いことから、魔除けになると考えられていました。

枯れ野から着想を得たピンクッション

南部菱刺し針刺し
糸は上から、オリムパス845番、Anchorの371番、Anchorの369番、Anchorの907番、Anchorの943番の5色を使用しています。6本取りです。

オリムパス845番とAnchorの943番で刺した部分、Anchorの371番、Anchorの369番、Anchorの907番で刺した部分の菱模様が逆模様になっています。

サイズは、縦約5.2cm×横約6cm、高さ約2.2cmです。

布は、1cm角 縦約11目×横約11目の麻布を使用しています。

詰め物は羊毛を使用することにより、針が錆びない工夫をしています。

 

菱刺し
周りはオリムパス845番でかがっています。

 

菱刺し
針を刺した様子です。

 

菱刺しピンクッション
小ぶりですので、小さめのお裁縫箱にもおさまりやすいかと思います。

布の違いを楽しんで

菱刺しピンクッション
菱の小模様を施したピンクッション、菱刺しの伝統模様「雉子の足」を施したのピンクッション、日本伝統文様青海波のピンクッションを並べてインテリア風に飾ってみました。

菱刺し巾着
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菱刺しピンクッション
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青海波のピンクッションと比較しますと、菱の小模様と「雉子の足」のピンクッションは小ぶりです。

また、菱の小模様と「雉子の足」は1cm角 縦約11目×横約11目の麻布を、青海波は1cm角 縦約15目×横約12目の麻布を使用しています。菱の小模様と雉子の足は、はっきりとした印象に、青海波は目が細かい布を使用している分、細やかな印象になっているかと思います。

同じ目数の模様であっても布の目の大きさにより、同じ範囲(例えば1cm角など)に入る模様数も作品の雰囲気も変わります。それぞれの良さや個性を知った上での布選びの大切さをいつも実感しています。

おわりに

枯れ野より着想を得て制作しましたピンクッションのご紹介をしましたが、いかがでしたでしょうか。

菱刺しでは、表面だけではなく、裏面に表現される模様も大切に刺してゆくのですが、表面の糸の部分が裏面の布の部分となり、表面の布の部分が裏面の布の部分となっており、つまり表面と裏面が逆さ模様となるわけです。ですので、裏面を見て、表面とはまた違う美しさを感じることも多いです。

その表面と裏面、二つの模様、つまり逆模様を順に施すことで、どこか新鮮な面白さが生まれます。

模様により、逆模様を連ねてゆきやすいもの、また、接する部分の模様の表現の仕方に少々難しさを感じるものなど様々です。また、今回はグラデーションをかけながら刺しましたが、同色の糸で逆模様を施しても大変美しいです。アレンジを加えながら、デザインを創作してみてくださいね。

お付き合いくださいましてありがとうございました。

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