菱刺しとは、青森県南部地方に伝わる刺し子技法です。地刺しとは菱の枠のつかない模様を連ねる刺し方をいいます。今回は地刺し模様である亀甲と立涌を施し、雲を描いたピンクッションのご紹介をします。雲や立涌、亀甲の意味や由来についても綴りたいと思います。
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雲
皆さまの中にある忘れられない雲の情景とはどのようなものでしょうか。
私の中での印象的な雲の情景は、何層にも重なり連なった色の深い雲の群れが、長く先まで空を覆いつくし、雲と雲の間から、橙とも紅ともいえない夕焼けの色に白を混ぜたような淡い色彩がうっすら覗いていた、というものです。
層積雲であったのだと思いますが、長く棚引く様子は、何かの予兆であるかのような異世界へ迷い込んだような不思議な感覚が起こったことを覚えております。
実際、千姿万態の雲は、何かが起こる兆しを知らせる存在と考えられてきたようです。
菱刺しの枠のつかない刺し方である地刺し模様の亀甲と立涌を施し、雲を描きました。
布は1cm角約 縦15目×約12目の麻布を使用し、糸は25番刺繍糸を8種類使用し、5本取りにして刺しました。
亀甲:オリムパス100、DMC822、COSMO152A、COSMO474、COSMO475
立涌:オリムパス354、COMO253、COSMO163
コーチングステッチの芯の糸には藍染め糸を、止める糸にはラメ糸を使用しています。
全体的に淡い色の糸を使用することで、雲の柔らかさやゆったり感を表現できたのではないかと思います。
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模様の持つ意味
描いた雲、施した亀甲、立涌の持つ意味や模様の種類、由来などについて綴りたいと思います。
雲に込められた願いや意味
神や龍の住処と言われる雲は超自然的存在とされ、雲の姿、形を変えゆく様子に、人々は物事の起こりや幸運を見つめ、雲のゆったりと流れる様子に、平穏な暮らしを願いました。
雲は雨を降らせる為、人を留め、縁を呼び込むもの、そして、植物を育てる豊かな実りを意味します。また、消えては生まれる雲は輪廻転生の意味も持つようです。
このように深い意味を多く持ち、神秘的な雲ですが、文様の種類も実に様々です。
良いことが起こることを知らせる雲を図案化したものを「瑞雲」といいます。
万年茸というキノコを中国では霊芝(れいし)と呼び、万年茸を雲にかたどった吉祥文様を「霊芝雲」といいます。
雲の中に花模様を配した「花雲」や、雲が飛ぶ様子を文様化した「飛雲」、雲を菱状に形作った「雲菱」などがあります。
また、雲を模様の途中に配置して空間を区切ったり、雲の中に模様を描いたデザインを「雲取り」といい、雲の外に模様を配したものを「逆雲取り」といいます。
立涌
立涌は向かい合った2本の曲線が、膨らみとへこみを繰り返し、雲気(水蒸気)が立ち昇る様子を描いた文様です。
「雲気」が「運気」となり、運気上昇の願いが込められています。
立涌の中に雲を描いた文様が「雲立涌文」です。
平安時代以来、貴族の装束や調度などに使われた有職文様のひとつであり、雲立涌文は親王の指貫や関白の袍に用いられました。
今回は亀甲模様を雲の中に描き、一部、立涌模様を施しました。
亀甲
六角形の幾何学模様である亀甲文様は、西アジアが発祥です。日本へは飛鳥奈良時代に中国から伝えられ、亀の甲羅に似ていたことからこの名前がつけられました。英語では蜂の巣からビーハイヴ・パターンとよびます。
「鶴は千年亀は万年」という諺もあるように、亀は長寿の象徴です。亀の甲羅は崩れない六角形であることから、和を持つという意味も持ちます。また、亀の甲羅のようにかたく身を守るという意味もあります。
ピンクッション
ピンクッションに仕立てたものがこちらです。
サイズは約 縦6.7cm×横9.7cm、高さ約3cmです。
詰め物は羊毛を使用することにより、針が錆びない工夫をしております。
羊毛を詰めると、雲に立体感が生まれました。雲のふわふわ感が表現できたのではないかと思います。
雲の上の方です。周りはCOSMOの152A(同色の糸です)でかがっています。
雲の下の方です。
針を刺した様子です。
大きめのピンクッションですので、多く針を使用される方にもよろしいかと思います。
お裁縫箱に入れた様子です。
刺し子やお裁縫、刺繍など、日々の手芸のお供にいかがでしょうか。
インテリア風に飾った様子です。
絶えず様子を変え、思うままに流れ、捉えきれない雲をぎゅっとピンクッションに詰め込みました。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
縁起の良い意味を持つ雲ですが、姿、形も可愛らしく、神秘的でもあり、平和な雰囲気漂う様子が魅力であると思います。
雲の形は千差万別ですし、組み合わせる模様により新たな願いや意味、味わいも生まれますので、雲にまつわるデザインが多く生まれる気がしております。
皆さまも是非、雲を眺め、平和を願ってみてくださいね。
今回もお付き合いくださいましてありがとうございました。
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