青森県南部地方に伝わる刺し子技法を菱刺しといいます。菱刺しには自然のものを模した模様が多くあり、その中で「梅の花」は菱刺しを代表する模様です。今回は「梅の花」を施したピンクッションのご紹介、そして、菱刺しの「梅の花」と梅文様について綴ります。
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梅
菱刺しの「梅の花」模様です。
1cm角 縦約11目×横約11目の白い麻布に、桜、ログウッド、待ち宵草、葛で染めた草木染めの糸を使用して刺しました。
菱刺しは、しごく作業「糸こき」を行わず、布縮みのないようにひと針ひと針刺してゆく手仕事です。
「梅の花」は、その菱刺しのゆったりとしたおおらかさがよく表現された模様であると思います。
私が菱刺しを始めてまず初めに学んだ模様が「梅の花」でした。一方で、「梅の花」は刺し方が上達してからでなければ刺せない模様とされた時代もあったようです。
布の保温補強の為に刺し子を施したことが菱刺しの始まりですから、「梅の花」はゆったりとした模様である分、丈夫さはやや低いのかもしれません。
また、「梅の花」模様は、表面に表れる糸の部分が長めですよね。
強くすぎず、また弱すぎないように糸を引くことが表現のポイントであり、そのあんばいがなかなか難しい模様であるのです。
習い初めに学ぶ模様でもあり、上達してから刺す模様ともされる「梅の花」ですが、いずれも菱刺しの中で少し特別な意味を持つ模様であることを物語っているように感じます。
どの模様も等しく美しいですが、「梅の花」を見ますと、やはり「菱刺し」を感じるように思います。
また、松や竹と共に縁起が良いとされる「梅」は日本の歴史や文化に深い関わりのある花です。
現在はお花見といいますと桜を思い浮かべますが、昔は梅の花を楽しむ行事でした。梅を詠んだ和歌も多くございます。また、家紋にも取り入れられ、梅にまつわる言葉もございます。
このように梅は、長く愛され、人々と共に歩んできた花なのです。
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梅文様
梅文様を一部ご紹介したいと思います。
梅鉢
出典:シルエットAC
中心の円と、周りの大きめの5つの円で梅の花を表したものです。
裏梅
梅の花を裏から見た様子を表した文様です。
捻じ梅
出典:シルエットAC
花弁が捻じれた形になっている文様です。
八重梅
出典:イラストAC
八重咲きの梅の花の文様です。
光琳梅
尾形光琳の画風を真似て意匠化した文様です。
光琳文様には梅の他に、菊や桐、桔梗、松、楓などがあります。
梅格子
梅の枝を格子状に表現した文様です。
枝梅
梅の枝を散らした文様です。
槍梅
梅の枝を曲げずに槍状にまっすぐ立て並べた文様です。
菱刺しの「梅の花」図案
菱刺しの「梅の花」のひとつです。四隅の菱は蕾を表現しています。
四隅の菱がないものなど、他にもいくつかの種類の「梅の花」模様がございます。
「梅の花」は、丸みのある様子が菱刺しらしいゆったり感が表れている模様であるように思います。
「梅の花」ピンクッション
ピンクッションに仕立てたものがこちらです。
サイズは、縦約6.6cm×横約7.7cm、高さ約2.5~2.8cmです。
詰め物は羊毛を使用することにより、針が錆びない工夫をしております。
周りは同色のログウッド染めの糸でかがっています。
表面と裏面は両面続きとなっています。
裏面です。
裏面にも少し模様を覗かせました。
針を刺した様子です。
お裁縫箱に入れた様子です。
同系色のアジサイと一緒に飾ってみました。
草木染めならではの渋みのある落ち着いた色合いが、菱刺し模様「梅の花」とよく合い、「梅の花」模様の美しさを引き立てるように思います。
菱刺しらしさを感じていただける作品となったのではないかと思います。
おわりに
縁起柄であり、菱刺しの代表模様でもある「梅」を施したピンクッションのご紹介をしましたが、いかがでしたでしょうか。
菱刺しでは、刺す順序や糸の組み合わせにより、色合いに変化を持たせることができます。
今回は、梅模様をひとつひとつを色を変えながら刺しましたが、地刺し風に刺してゆき、グラデーションをかけたり、菱の部分部分で色を変えたり、斜めに刺してゆくことで、同じ図案であっても雰囲気の異なる作品が出来上がります。
「梅の花」の刺し方についても綴った記事もございます。
長く愛されてきた梅に触れ、日本の歴史や文化、そして、菱刺しの「梅の花」を感じてみてくださいね。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
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