菱刺し

青森県刺し子南部菱刺し土佐つむぎ藍染め巾着。日本伝統文様麻の葉

菱刺し麻の葉巾着
麻は日本文化と関わりが深く、人々は麻と共に歴史を歩んできました。麻の葉由来の伝統文様「麻の葉」は縁起の良い意味を多く持ちます。今回は地刺し模様「麻の葉」を施し、土佐つむぎと合わせて制作した巾着のご紹介、そして「麻の葉」に込められた意味について綴ります。

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神聖な植物「麻」

麻Rex MedlenによるPixabayからの画像

古来、麻は神道と深い関わりのある神聖な植物として、大切にされてきました。

水浴でも落とすことのできない罪や穢れを麻は清めることができるとされ、また、神の依り代とも考えられています。

麻は、強い生命力をもち、生育速度が速く、環境への順応性も高い植物であり、まっすぐ伸びる性質は、善人に例えられます。

「麻のように丈夫にすくすくと成長してほしい」という願いを込め、「麻の葉」は産着の代表的な模様となっています。

日本人と麻の歴史は深く、縄文時代の土器は麻の縄で模様がつけられており、食料、燃料にも麻を用いたようです。また、畳の経糸や蚊帳、綱引きのロープなどにも麻が使われております。麻は長く人々に寄り添ってきてくれたのですね。

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縁起の良い「麻の葉」模様

麻の葉
伝統文様「麻の葉」は、基本的な形が正六角形の、幾何学的模様です。

麻の葉っぱに似ていた為、このように呼ばれるようになりました。

「麻の葉」には、「三角形(鱗紋)」「籠目(六芒星)」「菱形」「亀甲」が含まれています。いずれも縁起の良い意味を持つ文様であり、このことからも「麻の葉」の持つ意味の深さが分かります。

 

鱗紋出典:illastAC

鱗紋」は魔除け厄除けの意味を持ちます。

 

籠目出典:illastAC

籠目」です。三角形は神秘的な力があるとされ、その三角形の集まりである「六芒星(籠目)」はより強い力を持ち、邪気を祓うとされます。

 

菱出典:illastAC

菱形」は、繁殖力や生命力の強いヒシの葉または実が由来であり、子孫繁栄や無病息災の願いが込められた模様です。また、菱形は魔除けや厄除けの意味を持ちます。

 

亀甲出典:illastAC

亀甲」は亀の甲羅が由来の模様です。亀は子孫繁栄や不老長寿の象徴とされています。また、亀の甲羅のようにかたく身を守るという意味や和を持つという意味があります。

菱刺し巾着

菱刺し地刺し麻の葉
麻の葉」模様です。

菱の枠のつかない模様を刺し連ねる刺し方を「地刺し」といい、こちらは地刺しの麻の葉模様になります。

二種類の藍染め糸を使用して刺しました。
濃い藍色の間に、少し薄めの青を置く形にしましたが、真上から眺めた時と横から眺めた時では、二種類の藍が混ざり合う印象であったり、はっきり分かれる印象であったりと、色彩の不思議を感じます。

「麻の葉」模様が反転した模様を家紋では「陰麻の葉(かげあさのは)」と呼びます。菱刺しは表面と裏面が逆さ模様となりますので、裏面には正しく「陰麻の葉」模様が表現されます。裏面を表面として刺しても美しいです。

 

菱刺し麻の葉巾着
巾着に仕立てたものがこちらです。

サイズは、約 縦24cm×横15.5cm、マチ約3cmです。

ハンカチ、ポケットティッシュ、スマートフォンを入れた状態です。

大きすぎず、小さすぎもしないので、用途が広く、様々な場面でお使い頂けるかと思います。

小物をまとめて大きめの鞄に入れてお使いになられてもよいですし、短い外出でしたら巾着のみを持ってお出かけになられてもよろしいかと思います。

 

菱刺し麻の葉巾着
口を広げた状態です。

菱刺しを施した部分の布は1cm角約 縦8目×横9目の麻布です。

合わせた布は高知県の民芸布である土佐つむぎになります。

土佐つむぎは「紬」ですが、絹糸ではなく、木綿糸で織られます。いくつかの染料を合わせることで表現される深く渋い色合いが魅力です。現在ではそれらの拘りの染料を揃えることが難しくなったことや後継者不足によって近年生産中止となりました。「幻」といわれます。

土佐つむぎは糊落としを行い使用しましたので、柔らかな風合いとなっております。

土佐つむぎについてはこちら綴っております。

南部菱刺し
土佐つむぎと合わせて制作した南部菱刺しカードケース【青森刺し子】 高知県の民芸布に、現在は製造中止となり「幻」といわれる土佐つむぎがございます。「紬」ですが木綿で織られる土佐つむぎは、他にはない深い...

巾着の口布は同じ土佐つむぎですが、別に取り付けて制作しました。

紐は水牛製のつやのある丸革で、大変柔らかで、すべりがよいです。

 

菱刺し麻の葉巾着
ポケットティッシュが横に入ります。

 

菱刺し麻の葉巾着
裏布には綿布を使用しております。

 

菱刺し麻の葉巾着
ひとまわり「麻の葉」模様を施しております。

 

菱刺し麻の葉巾着
一方は縫い合わせています。

麻布に濃い藍染め糸が映え、「麻の葉」の細やかな模様が綺麗に引き立ったのではないかと思います。

藍染めには防虫、抗菌、消臭効果などがあります。また、藍染めは糸を強くするといわれます。

青は清らかで神秘的な印象のある色です。また、青を見るとセロトニンという癒しのホルモンの分泌が促進され、リラックス効果のある色といわれます。また、青は平和や幸福の象徴とされます。

麻布に「麻の葉」模様、藍染め糸、青色、土佐つむぎと、多くの意味と拘りを詰め込んだ巾着になります。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

「麻の葉」には「三角形(鱗紋)」「籠目」「菱形」「亀甲」が含まれ、角度などによって様々な見方ができますし、色合いによっても印象を変えるような、どこか不思議な模様であると思います。

菱刺しは偶数目を拾って刺しますので、菱刺しの「麻の葉」模様は少し横長ですが、縦長の布を使用することで正六角形に近づけることができるかと思います。このような点も面白さのひとつであると思います。

今回は藍染め糸を使用し、土佐つむぎと合わせて制作しましたが、組み合わせる素材や色彩の違いにより、効果効能を深めることができますし、多様な意味を持たせることもできます。

例えば、紅花には抗菌作用があり、ログウッドは邪気を祓うとされます。また、緑色は癒しの効果があり、桜色にはリラックスさせる心理効果があります。

皆さまも様々な組み合わせを楽しまれてみてはいかがでしょうか。

お付き合いくださいましてありがとうございました。

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