緑茶での染色は、どのような色合いを思い浮かべられますか。煮出しを繰り返すことにより、染液の色は変化し、媒染によっても異なる色合いが表現されます。
今回は緑茶染め、そして、緑茶で染めた麻布に地刺し模様「矢羽根」を施した南部菱刺しのピンクッションについて綴ります。お茶に包まれるようなやわらかな空気をお届けできればと思います。
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用意したもの
・緑茶・・・25g
・染めるもの・・・麻布、刺し子糸(かせ) 合計約50g
・濃染処理剤ディスポン
・銅媒染液
・木酢酸鉄液
・焼きみょうばん
・重曹
・ステンレス鍋
・不織布
・ボウル
・温度計
・菜箸
・ゴム手袋
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精錬と濃染処理(下地染)
不純物や汚れを落とすことを精錬といいます。
布と刺し子糸はよごれのないものでしたので、ぬるま湯で簡単に手洗いをしました。
色素はタンパク質と結びつきやすく、タンパク質を含む動物繊維と比べ、植物繊維はタンパク質を含んでおらず、染まりにくいです。そのため、麻や綿の植物繊維は表面にタンパク質を付着させ、染まりやすくします。
この過程を濃染処理といいます。
今回、濃染処理には、市販の濃染処理剤ディスポンを使用しましたが、豆汁や豆乳、牛乳で行うこともできます。
ディスポンなどの助剤の方が色ムラも少なく、よく染まるように思います。
濃染処理の様子です。
①80~90℃の熱湯1ℓにディスポンを3~4㎖加えます。
②染めるものを入れて、ムラのないように15~20分間程よく動かします。
③取り出して水洗いをします。
染液の抽出
緑茶を不織布に入れ、重曹を加え(アルカリ抽出)、沸騰後約15分くらい煮込みます。
1ℓずつ、5番液までとりました。
1~2番液は赤みの茶色、3番液から少しずつ黄みを帯び、4~5番液は緑みの淡い黄色となりました。
時間を置いたものです。左から1番液、2番液、3番液、4番液、5番液です。
時間を置くと、抽出してすぐよりも、色が濃くなってゆきます。
染液による色の違いを楽しみたいので、色の濃い赤茶系の1~2番液を混ぜたものと、薄めの黄みの3~5番液を混ぜたものと、色の違う二種類の染液を作りました。
染め
染液を温め、70~80℃くらいになったら火を止めて、染めるものを入れます。
染めるものは、染液に入れる前に、しっかり湿らせておくことが大切です。このことで、色ムラを防ぐことができます。
染めるものを染液に入れたら、色ムラのないように動かしながら染めてゆきます。
1~2番液で糸を染めている様子です。
3~5番液で糸を染めている様子です。
このまま染液に浸してひと晩置きました。
これまで、染液に浸す時間は一時間半~数時間程のことが多かったのですが、今回、染液に浸したままひと晩置いたことにより、より濃くしっかり染まったように感じます。
媒染
アルミ媒染剤は焼きみょうばんで作ります。染めるものに対して約5%の焼きみょうばんを湯に溶かして使用します。
銅媒染には銅媒染液(濃色20%)、鉄媒染には木酢酸鉄液(濃色4%)を使用しました。
ムラのないように動かしながら媒染を行います。
1~2番液で染め、アルミ媒染を行っている麻布です。
3~5番液で染め、アルミ媒染を行っている麻布です。
緑茶染
左上は、1~2番液で染め、アルミ媒染を行った麻布
右上は、3~5番液で染め、アルミ媒染を行った麻布
左下は、1~2番液で染め、銅媒染を行った刺し子糸
真ん中は、3~5番液で染め、銅媒染を行った刺し子糸
右下は、3~5番液で染め、鉄媒染を行った刺し子糸
です。
3~5番液で染めた刺し子糸が、銅媒染を行ったものと鉄媒染を行ったものの色が近くなりました。銅媒染の方が少し赤みのある印象ではありますが、鉄媒染のものは灰色がかった色を想像しており、予想とは異なる色合いとなりました。鉄媒染を行った方が思うように発色できなかったのかもしれません。
2、3回染めと媒染を繰り返すことも多いのですが、今回は一回の染めと媒染でしっかり染まった印象です。ひと晩染液に浸したことが関係あるのかもしれません。
緑茶染のピンクッション
3~5番液で染め、アルミ媒染を行った麻布を使用し、ピンクッションを制作しました。
糸は蘇芳染の紫色の刺し子糸を使用し、地刺し連続模様「矢羽根」を施しました。
矢は真っすぐに進むことや、「的を射る」という意味から縁起柄とされます。
緑茶染の優しい黄色も見えるように、一部あけて刺しました。
裏面は緑茶で染めた同色の麻布を使用しています。
サイズは縦約6cm×横約8.5cm、高さ約2.5cmです。
周りは蘇芳染の刺し子糸でかがっています。
染色した麻布の風合いはやわらかく、また、刺し子糸も細めのものを使用しましたので、全体的にふんわりとした、お茶に包まれるようなやわらかさのある印象のピンクッションとなったように思います。
針を刺した様子です。
薔薇を添え、季節の花オルラヤをバックに撮影をしてみました。
緑茶染のピンクッションですので、緑色の葉っぱのおふとんにのせてみました。
緑と青のクレマチスの色合いがピンクッションとよく合っています。
草木花々、豊かな自然の色合いはこの季節ならではですね。癒されます。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
お茶は茶葉により、少しずつ色合いが異なります。煮出しを繰り返すことでも様々な色の液をとることができますし、抽出の仕方によっても色合いは変化するようです。
お茶で染める多彩な色合いを楽しみ癒されながら、より求める色を探してゆければと思います。
お茶の時間のやわらかな空間や香り、色合いのように穏やかな気持ちをお届けできましたら嬉しいです。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
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