青森県南部地方に伝わる刺し子技法を菱刺しといい、菱刺しでは、偶数目を拾って刺してゆきます。今回は菱の小模様3種類を連ねて刺す刺し方と裏の糸処理の仕方について綴ります。材料選びのポイントもご紹介しますので、ご一緒に刺してみませんか。
スポンサーリンク
図案
菱刺しでの模様サイズは、菱の枠の中の模様の「横の目数×縦の段数」と表します。
ですので、こちらの模様のサイズは「14目×7段」となります。
今回は「14目×7段」の小模様3種類(A、B、Cとします)を刺してみたいと思います。
スポンサーリンク
材料
菱刺しで使用するものは刺し子用の布、糸、針になります。
左側が綿素材のコングレス布で右側が麻布になります。
菱刺しでは主に、綿素材のコングレス布と麻布を使用します。
触れた感触や重さなど、好みは様々ですが、目の数えやすさで選ぶのならば、目のはっきりしているコングレス布がおすすめです。今回はコングレス布を使用したいと思います。
針と糸です。
布の目の大きさによりその時々で太さを調整して使用しますが、菱刺しでは主に太めの糸を使用します。糸を撚らせながら刺しますので、撚りの強い糸を使用すると刺しやすいです。今回は柿渋染めの糸を使用します。
針はこぎん針を使用します。先が尖りすぎない丸みのある、刺繍糸よりも太い針になります。
実は菱刺し針というものがないんです。ですので、青森県の津軽地方に伝わる刺し子技法「こぎん刺し」用の針を使用します。
刺しやすさなどにより、使用機会の多いものはございますが、材料に「必ずこのようなものを使用する」というきまりはないので、それぞれお好みの材料を選んでみてくださいね。
刺し方
まず、糸は、絡まらない程の長さに切って使用します。途中で糸が足りなくなったら糸かえしますので、刺しやすい長さをご自身で調節なさってくださいね。
刺し始まりは、表面から針を通し、糸の端を少し表面に出しておきます。
このようにすることで、裏面での糸の絡まりを防ぐことができます。最後に糸処理をしますので、糸の端は表面に出したまま進めてくださいね。
Aを刺してゆきます。
まず、裏面から表面に向かい針を通します。
刺す方向に決まりはございませんが、今回は、1段目を左から右方向へ向かって刺します。2段目は右から左方向へ、3段目は左から右方向へ・・・、となります。
2目拾い、表面から裏面に向かい、針を通します。
糸をゆっくり引くとこのようになります。
布が縮まらないように、強く引っ張りすぎず、優しく引いてくださいね。
菱刺しでは運針のように刺したりはせず、ひと針布に針を通し、またひと針通し、というように刺しますので、縫い終わった後に布の縫い縮みがないように、指でしごく作業「糸こき」を行いません。このあたりも菱刺しの特徴のひとつです。
1段目が刺し終わりましたら、2目ずらして1段さがり、裏面から表面に針を通します。
2目拾い、表面から裏面に向かい、針を通します。
裏面です。
布を引っ張りすぎないように、折り返しの部分は、余裕を持つ感覚で引いてくださいね。
2目ずらし、裏面から表面に向かい針を通します。
2目拾い、表面から裏面に向かい、針を通します。
糸を引くとこのようになります。2段目が刺し終わりました。
3段目です。3段目は左から右方向へ刺します。
2目拾い、表面から裏面に向かい針を通します。
6目ずらし、裏面から表面へ向かい針を通し、2目拾い、表面から裏面へ針を通します。
4段目です。4段目は、右から左方向へ刺します。
4段目では模様が始まります。
4段目まで刺し終わるとこのようになります。
5段目(模様2段目)まで刺し終わった様子です。
6段目(模様3段目)です。
模様3段目は、4目拾います。
糸を引くとこのようになります。
6段目(模様3段目)まで刺し終わるとこのようになります。
7段目(模様4段目)です。
模様4段目では6目拾います。
糸を引くとこのようになります。
7段目まで刺し終わった様子です。
Aが半分まで刺し終わりました。
8段目です。8段目は6段目と同じ刺し方になります。
7段目を刺し終わった目から、そのまま1段さがり、2目ずらして針を通してください。
8段目まで刺し終わるとこのようになります。
Aの8段目と同時に、Bの1段目が始まります。矢印で示した部分がBの1段目になります。
Aの1段目を左から右方向へ向かって刺し、2段目を右から左方向へ、3段目を左から右方向へ・・・、と繰り返し、8段目を右から左方向へ向かって刺す場合、Aの8段目を刺し終えましたら、2目ずらし、裏面から表面へ針を通し、2目拾い、Bを同時に刺し始めることになります。
こちらが、連続して刺す場合のポイントになります。
同時に2種類の菱を刺してゆくことは、やや難しく感じられるかと思いますが、「Aは〇段目、Bは〇段目」というように、それぞれ数えますと刺しやすいように思います。
Bの2段目までを刺し終えるとこのようになります。
Bの2段目まで刺し終えましたら、次はAの9段目を刺します。
Aの9段目はAの5段目と同じ刺し方になります。
AとBを順に刺し連ねてゆき、Aの9段目とBの2段目までを刺し終えますとこのようになります。
Aの10段目とBの3段目までを刺し終えるとこのようになります。
Aの10段目は4段目と同じ刺し方になります。
Aの12段目、Bの5段目までを刺し終えた様子です。
Bの4段目からは模様が始まりますのでご注意くださいね。
13段目まで刺しますと、Aが刺し終わります。
Bの7段目(半分)までを刺し終えました。
Bの8段目と同時に、Cの1段目が始まります。矢印で示した部分がCの1段目になります。
Bの8段目を左から右へ刺す場合、Bを刺し終えましたら、2目ずらして、2目拾い、Cを刺し始めてゆきます。
Bの10段目まで、Cの3段目までを刺し終えました。
ここで、糸変えをしてゆきたいと思います。刺し終えた糸の端は、刺し始めと同じように、表面に出しておきます。
糸変えの場所にきまりはございませんので、糸の長さなどにより、糸変えをしやすい箇所で行ってくださいね。
Aの11段目、Cの4段目までを刺し終えるとこのようになります。
糸変えをした刺し始めの糸の端も表面に出しておいてくださいね。
今回は、Aの1段目を左から右方向へ、2段目を右から左方向へ・・・、Aの8段目、Bの1段目を右から左方向へ・・・、Bの8段目、Cの1段目を左から右方向へ・・・、と繰り返し、Aの10段目、Cの3段目は左から右方向へ刺しました。
お伝えしやすいように、Bの11段目、Cの4段目は右から左方向へ向かって刺しておりますが、刺す方向にきまりはございません。例えば、糸変えを行った時点で、Bの11段目、Cの4段目を左から右方向へ向かって刺してもよいわけです。
ご自身の刺しやすい方向で進めてみてくださいね。
Bを13段目まで刺し終えますとBの完成です。
順にCも刺してゆきます。
Cの7段目が始まります。
ここからはCのみを刺してゆきます。
Cの7段目(半分)まで刺し終えるとこのようになります。
8段目は6段目と、9段目は5段目と、10段目は4段目と同じ刺し方となりますので、順に刺し連ねていってください。
Cを13段目まで施しますと、3種類全てを刺し終えたことになります。
刺し終わりも糸の端を表面に出しておいてくださいね。
裏の糸処理
糸処理までを終えて完成となります。
ここからは、裏面で行う糸処理の方法についてご説明をしてゆきますね。
裏面になります。
表面での糸の部分が裏面での布の部分になり、表面での布の部分が裏面での糸の部分になります。よって、表面と裏面では逆模様になるわけです。
裏面を表面と間違えて撮影を行ったというエピソードもある程、菱刺しでは裏面も大切に刺し、そして、糸処理を丁寧に行います。
裏面に表現される模様を表面の模様として施すこともございますので、裏面も楽しんでみてくださいね。
菱刺しでは基本的に玉結びや玉止めを行わず、また、表面から見えないように処理を行うことが菱刺しの特徴であり、糸処理のポイントとなります。
表面の糸の部分の布を2目ほどすくいます。
ゆっくり糸を引くとこのようになります。強く引きすぎないように心を配ります。
菱形の刺し始めと刺し終わりの糸処理は、1、2段下の、又は、1、2段上の布の目をすくう場合が多いです。「必ずこの部分で」というようなきまりはございませんので、すくいやすい部分で行ってみてくださいね。
菱形の途中の糸処理は、横の目をすくう場合が多いです。
糸を引くとこのようになります。
全ての糸処理を終えたら、糸の長い部分をカットしてくださいね。
完成です。
小さな3種類の菱模様が並び、可愛らしいですね。
菱刺しの特徴、刺し方や糸処理のポイントは以下になります。
・布の目の数えやすさで選ぶのならば、目のはっきりしているコングレス布がおすすめ。
・撚りの強い糸を使用すると刺しやすい。
・刺し始まりと刺し終わりの糸の端を少し表面に出しておくことで、裏面での糸の絡まりを防ぐことができる。
・菱刺しでは運針のように刺したりはせず、ひと針ひと針刺してゆき、しごく作業「糸こき」を行わない。
・菱刺しでは基本的に玉結びや玉止めを行わない。
・裏面での糸処理は、表面から見えないように、表面の糸の部分の布をすくって行う。
・裏面も表面同様に、大切に刺してゆく。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
サイズの大きい模様は華やかですが、小さい模様は可愛らしく、気軽に刺せる点も小さい模様ならではの個性かと思います。
今回は斜めに連なった模様を施しましたが、横や縦に並ぶ模様もまたお洒落ですし、デザイン的に菱を配置しますとオリジナル性も高まるように思います。
是非、菱刺しを楽しんでみてくださいね。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
スポンサーリンク
スポンサーリンク