青森県南部地方に伝わる刺し子技法を菱刺しといいます。「紗綾形」は整然たる雰囲気を持つ縁起の良い文様です。今回は「紗綾形」模様を施した菱刺しのピンクッションのご紹介をします。「紗綾形」に込められた意味や由来について綴ります。
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紗綾形の意味や由来
「紗綾形」とは、「卍」を菱状に崩して、連続的に繋げた文様です。
「卍崩し」や「卍繋ぎ」、「菱万字」、そして、稲妻形に似ていることから「雷文繋ぎ」や「雷文崩し」とも呼ばれます。
桃山時代、絹織りの一種である紗綾が中国の明から輸入されました。その織物に多く用いられた地紋であったことから「紗綾形」と呼ばれるようになりました。
「卍」は、様々な文化で多様な意味を持つようです。
吉祥の印の象徴や仏心の印、美徳の象徴の印、陽光の象徴などです。
また、幸福や繁栄の印とされることから、「紗綾形」には幸福が絶えず繋がってゆくことや、家の繁栄、長寿の願いが込められています。
江戸時代には、絹織物の一種である綸子の地紋は、主に、上に菊や蘭を配した「紗綾形」が用いられました。この地紋を「本紋」と呼びます。
連続せずに、所々途切れた「紗綾形」を部分的に使った文様を「破れ紗綾形」といいます。
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菱刺しの紗綾形
Anchor905番、Anchor393番、Anchor899番、COSMO475番、COSMO652番、COSMO653番、COSMO652番、COSMO475番、Anchor899番、Anchor393番、Anchor905番の順に刺しています。
中心のピンク系に向かい、茶系から紫、紫からピンク系へとグラデーションをかけています。
茶系と渋めの紫系の糸を使用していますので、全体的に落ち着いた雰囲気となっているかと思いますが、中心に入れたピンク系がポイントなり、明るさも生まれたのではないでしょうか。
布は、1cm角 縦約11目×横約11目の麻布を使用しています。
ピンクッション
ピンクッションに仕立てたものがこちらです。
サイズは約5.7縦cm×横8cm、高さ約2.7cmです。
詰め物は羊毛を使用することにより、針が錆びない工夫をしております。
周りは同色の糸(Anchor393番)でかがっています。
針を刺した様子です。
お裁縫箱に入れた様子です。
茶系のインテリアと飾ってみました。
「紗綾形」の端正で品格のある雰囲気は皇族や武家に好まれたようです。また、昔は、女性の慶事礼装用の白襟は、「紗綾形」の使用が決まっていました。
このように「紗綾形」はどこか心が引き締まる風情漂う模様であるように思います。
一方、「紗綾形」は色合いにより、様々な表情を見せる模様であるようにも感じます。
今回はくつろいだ雰囲気を出すように、茶系と紫、ピンク系の糸を使用した色合いの軽やかさと「紗綾形」模様の重厚さとの調和を心掛けてみました。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
菱刺しはどこか丸みのあるようなゆったりとした味わいが特徴のひとつかと思いますが、その中で、「紗綾形」はかっちりとした佇まいのある模様かと思います。また、複雑な模様であることもあり、制作中も他の模様とは違う、独特の緊張感がありました。
「紗綾形」は他の表現をされた模様もありますので、またご紹介できればと思います。
皆さまも是非、「卍」から広がる、端正な「紗綾形」模様の世界を感じてみてくださいね。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
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