菱刺し

青森刺し子南部菱刺しスマホケース、イメージを形に

菱刺し
南部菱刺しは、菱形模様や地刺し模様、丸刺しなどを連ねて表現してゆく技法ですが、それらを少しアレンジして絵を描くこともできます。その菱刺しで施した絵柄のスマホケースを作ってみたいと思います。今回はバックステッチで図案をなぞる部分までについて綴ります。

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構想を立てる

作品の縦と横の長さや菱刺し地刺し模様を施す部分、模様についてなど、しっかりと作品の全体像を描くことが大切です。

今回は縦18cm×横10cmの少し大きめのスマホケースを作りたいと思います。スマホカバーを付けているような少し大きめのスマートフォンでも余裕を持って入れられるようなスマホ専用のミニ鞄、というような印象でしょうか。

 

青森刺し子スマホケース
こちらの木に菱刺し地刺し模様を施し、絵を描いてみたいと思います。

菱刺しで絵を描く場合の図案を考える際に心がけていることは、模様を引き立たせ、且つ刺しやすい図案であることです。菱刺し模様地刺し模様を施しますので、模様を施す部分のスペースは、ある程度広く取り、細かすぎるものより略画というのでしょうか、大まかな絵の方が刺しやすく、模様も映えるように思います。今回は木ですので、樹冠も大きめに、幹も細くなりすぎないようにしてみました。

木の下には地刺しで大地を描く予定です。


(縫い代を入れないで)布は表裏で縦18cm×横20cm使用します。

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布と糸選び

刺し子糸
布は1cm角約縦14目×横13目の生成りの麻布を使います。糸は9種類の糸を使用します。

右から、
・オリムパスの453番(撚りが弱い刺繍糸、化学染料染め)
・オリムパスの632番(撚りが弱い刺繍糸、化学染料染め)
・DMCの554番(撚りが弱い刺繍糸、化学染料染め)
・オリムパスの166番(撚りが弱い刺繍糸、化学染料染め)
・オリムパスの546番(撚りが弱い刺繍糸、化学染料染め)
・つきやの704番(撚りが強い刺し子糸、化学染料染め)
・ケヤキ染め(撚りが強い刺し子糸、草木染め)
・待宵草染め(撚りが強い刺し子糸、草木染め)
・ログウッド染め(撚りが強い刺し子糸、草木染め糸)
になります。

刺し子布
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布を裁つ

布は表裏で縦18cm×横20cm使用するので、縫い代分も余裕を持って布を裁ってくださいね。

端をかがる

菱刺し
菱刺しで使用するコングレス布や麻布は端がほつれてきやすい布も多いので(目の大きな布程ほつれやすいです)、端をかがって使用します。布の耳の部分はかがらなくても大丈夫です。

ロックミシンを使用して端をかがることもありますが、菱刺しの伝統的なかがり方は、何目かずつ手でかがってゆく方法です。私は、目の細かい布を使用する際はロックミシンを使用することもありますが、今回は手でかがってゆきますね。

かがる糸はどのような糸でもよろしいですが、仕立てる時に抜くので、抜きやすい糸がよいかと思います。

図案を写す

青森刺し子
こちらを布に写してゆきます。

トレーシングペーパーの「ムーンベール」と専用の図案写しマーカーを使用して図案を写しています。複写紙不要で図案を写すことができるので大変便利です。

 

青森刺し子
まず、用意した図案の上にムーンベールをのせて、マーカーでなぞります。すると、ムーンベールに図案が写ります。

この時に注意すべきことは、図案とムーンベールの間にクリアファイルなどの透明なものを挟んでなぞることです。挟まずになぞってしまうと、図案にインクが写ってしまいます。また、透明なものでなければ図案が透けずに見えなくなってしまいますのでご注意くださいね。

 

菱刺し
次に、図案が写ったムーンベールを布の上にのせて、また上からなぞります。すると簡単に布に図案が写るのです。

時々布に写るインクが薄いと感じることがありますが、その時は直接マーカーで再度図案をなぞるとはっきりします。また、布についたインクを水で落としてもうっすら残る感じの時もあります。しかし、少しずつ薄れてゆきますので、私はこれまで不便なく使用できております。しかし、私の場合、麻布でしか使用したことがございませんし、素材によって異なる場合もあるかと思いますのでご注意くださいね。

こちらになります。

ムーンベール

ムーンベールは縦30cm×横50cmですので、例えばお洋服の型紙など、大きな図案写しには小さく感じられるかもしれませんが、小さな図案を写すには十分な大きさがあり、また、マーカーのインクは水で消せますので、トレーシングペーパーも何度も使用でき便利です。図案を写す時にムーンベールを裏返して使用すると、反対転写もできます。

 


図案写しマーカー

私はゆっくりと作業したいので、水で落とさなければ自然には消えないタイプ(青)のマーカーを使用しておりますが、自然と消えるタイプ(紫)もあります。短時間で作業を終わらせる場合などは自然と消えるタイプが便利かと思います。

また、少々インクが滲むので、シンプルな図案を写す場合には向きますが、細かな図案を写す場合には向かないかと思います。

バックステッチで図案をなぞる

菱刺し
バックステッチに使用した糸はログウッド染めの糸です。8本取りのものを5本取りにして使用しました。

ここまで完成したら、マーカーのインクはこの時点で落としています。

思うこと

「菱刺しで絵を描くこともできるのよ」

元々絵を描くことが好きだった私は、先生のそのお言葉と作品に大変感動し、菱刺しの新たな側面に触れ、より深い魅力を知った気持ちがしたのです。

しかし、菱刺しで絵を描くことができると知っても、形にするにはイメージばかりが先走り、菱刺しで絵を描くことは長い憧れでした。

そして、ふと、ある時、イメージがはっきりと輪郭を持ち、想像を形にできそうな感覚が生まれたのです。

しかし、私が行っている、マーカーで図案を写したり、ステッチで図案をなぞったりという作業は、菱刺しの伝統的な手法とはいえないかもしれません。先生や先輩方が菱刺しで絵を描かれる場合は、枠は糸で縁取り、菱刺し地刺しを施したら、最後に縁取った糸は抜いていらっしゃいます。

それでも、伝統を守りつつ、自由な作品作りをすすめて下さり、大変ありがたいことと感じております。刺し子糸は撚りの強い太糸が多い中、私は撚りの弱い細めの刺繍糸も使用しますし、やや刺繍的な要素を取り入れている部分も中にはあるかと思います。思う作品作りができる温かい環境に感謝すると共に、伝統も大切にしてゆきたいと感じます。

そして、今はまだ絵を描く作品は小さなものが中心ですが、いつか帯など、大きな作品にも菱刺しで絵を描けたらと想像を膨らませております。

次回は早速菱刺し地刺し模様を施してゆきたいと思います。
よろしければご覧くださいませ。お付き合いくださいましてありがとうございました。

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