図案

青森県刺し子南部菱刺しタペストリー【矢羽根、四つ菱、五つ菱図案】

菱刺しタペストリー
菱刺しとは青森県南部地方に伝わる刺し子技法です。菱刺しは実用性のあるものに多く施されますが、装飾品としての作品も実に華やかで美しいです。今回は14種類の糸を使用して制作した菱刺しのタペストリーについて綴ります。施した模様や一部図案もご紹介します。

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菱刺しタペストリー

菱刺しタペストリー
約 縦137cm×横47cmのタペストリーになります。

藍染め4種、ログウッド染め3種、りんご染め2種、ラズベリー染め、化学染料染め4種と、14種類の糸を使用して刺しております。

タペストリー中心に7つ並ぶ大きめの「花の」はログウッド染めの糸とりんご染めの糸で施しておりますが、全て少しずつ色合いに変化を持たせています。

梅の花」は菱刺しの中でも代表的な模様です。

 

梅の花
こちらは「梅の花」の上と中心部分にログウッド染めの糸を加えて刺しております。

 

梅の花
こちらは中心と下の部分にログウッド染めの糸を加えております。

また、先の「梅の花」に比べ、こちらはログウッド染めの糸が少々色が濃いように思います。草木染めは、同色でも、その時々で色合いが少しずつ違い、時の流れによる色の移り変わりもあり、そのような様が草木染めの美しさであるとように思います。

 

菱刺しタペストリー
端は、ラズベリーで染めた糸と藍染め糸を2種類使用し、地刺し模様のひとつである「杉綾(すぎあや)」を施しております。

杉綾」は「綾杉」ともいいます。日本では杉の葉に見立ててこのように呼びますが、ニシンの骨に似ていることから、西洋ではヘリンボーン(herringbone)へリングボーンと呼ばれます。

タペストリーに施した「杉綾」はV字が横に連なっておりますが、縦に連なる「たてあやすぎ」模様もございます。「たてあやすぎ」は、奇数目を拾う模様ですので、青森県津軽地方のこぎん刺しの要素が強い模様かと思います。

また、「杉綾」の隣の菱模様を施した糸はログウッド染めです。ログウッドは「全ての色を持つ」といわれますが、改めて色合いの多彩さに感動します。

 

菱刺しタペストリー
下には、同色の糸で、ふさを施しております。

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模様と図案

一部模様と図案のご紹介をしたいと思います。

矢羽根

矢羽根
矢羽根」模様です。ログウッドで染めた糸で刺しております。模様サイズは横38目×縦19段です。

「矢羽根」は4枚羽の弓矢の羽根が、対角線上に形成された様子を表した模様です。菱刺しには矢を横から眺めた様子を表現した「矢の羽」模様もございます。

どこか、こちらを見つめているような面白さもございませんでしょうか。

実際、「矢羽根」の中には「猫の目(ねこのまなぐ)」と呼ばれる模様もございます。「まなぐ」とは、青森の方言で目のことをいいます。

「矢羽根」にはサイズや少しずつ表現の異なる模様が様々ございます。

 

矢羽根
こちらは模様サイズ横38目×縦19段の矢羽根です。

 

矢羽根
こちらは模様サイズ横46目×縦23段の矢羽根です。

先の模様は、対角線上に形成された4枚の羽根の部分が、表から眺めると布の部分になりますが、こちらは糸の部分になります。

 

矢羽根
こちらは横54目×縦27段の大きめの模様です。

また雰囲気の異なる模様ですよね。

四つ菱

四つ菱
四つの菱が並んだ「四つ菱」模様です。化学染料染めの糸です。模様サイズは横38目×縦19段です。

「四つ菱」も多種多様です。

 

四つ菱
横42目×縦21段の模様です。

 

四つ菱
横46目×縦23段の模様です。

 

四つ菱
横54目×縦27段の模様です。

五つ菱

五つ菱
五つの菱が並んだ「五つ菱」模様です。模様サイズは横38目×縦19段です。藍染め糸を使用しております。

「五つ菱」も、いくつかご紹介しますね。

 

五つ菱
上の模様に似ていますが、模様サイズが異なります。こちらは横46目×縦23段です。

 

五つ菱
こちらも横46目×縦23段の模様です。

 

五つ菱
こちらは横54目×縦27段の少し大きめの模様です。華やかな模様ですよね。

おわりに

菱刺しのタペストリーのご紹介をしましたがいかがでしたでしょうか。

こちらの作品にも多くの草木染め糸を使用しておりますが、草木染めは日光に触れることで色の移ろいを早めますし、また、化学染料染めも色が落ちにくいとはいえ、まったく変化がないということではないです。

ですので、ひとつの作品を長く飾り続けるのではなく、定期的な飾り替えを心掛けております。退色しにくさでは、白糸一色で施した額入りの作品などは少し安心です。

作品にはそれぞれ、制作した時の背景や心も紡がれます。
作品を飾ることで、装飾的にも心情的にも色彩が豊かになり、気持ちが少しすっきりするように思います。

菱刺しは麻布の保温補強の為に、前掛けや手甲、ももひきなどに施されたことが始まりです。現在はカードケースや鞄などにも刺され、日常で使うものにも多く施されて親しまれております。

一方、タペストリーや額、屏風など、装飾品としての美しい作品も多く生まれ、残されてきました。

このような用途の多彩さが菱刺しの魅力のひとつではないでしょうか。

人の心に訴える作品作りをしてゆければ、そのように思います。

今回もお付き合いくださいましてありがとうございました。

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