青森県南部地方に伝わる刺し子技法を菱刺しといいます。今回は、菱刺しの地刺し模様「立涌」の反転模様を施したピンクッションのご紹介をしたいと思います。また、「立涌」に込められた意味や模様の種類について綴ります。
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菱刺しの地刺し模様「立涌」
菱刺しの地刺し模様「立涌」です。
25番刺繍糸を8種類使用して刺しました。
上から、COSMO162番、COSMO163番、COSMO733番、COSMO213番、COSMO253番、Anchor978番、COSMO254番、COSMO167番になります。
布は、1cm角 縦約11目×横約11目の麻布です。
右上と左下は、立涌の反転模様になります。
グラデーションをかけながら、右上と左下に反転模様を施すことで、格子模様が出来上がり、左上、右上、左下、右下、それぞれ印象の異なる雰囲気を表現できたのではないかと思います。
反転模様には、自由な見方、自由な発想が広がるような面白さを感じ、特に「立涌」の反転模様にはそのような特徴が強く表れるように思うのですが、「立涌の反転模様」皆さまはどのような印象を持てれますでしょうか。
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立涌に込められた願いや模様の種類
「立涌(たてわく、たちわく)」は、向かい合う2つの曲線が、交互に膨らみとへこみを繰り返し、ゆらゆらと雲気(水蒸気)が立ち昇る様子を描いた文様です。
有職文様のひとつであり、平安時代以降、公家階級で装束や御簾の縁などの調度に用いられました。
「雲気」が転じ「運気」となり、運気上昇の縁起の良い願いが込められています。
「立涌」には、立涌が切れ切れに表現された「破れ立涌」や、曲線の膨らみの部分に他の文様を配したものなど、多くの種類がございます。
膨らみの部分には雲や飛沫を上げる波、桐の花や葉、牡丹、菊、葡萄などが描かれ、「雲立涌」や「波立涌」、「桐立涌」、「牡丹立涌」、「菊立涌」、「葡萄立涌」と呼ばれます。
また、立涌を藤のつるで表した「藤立涌」や、竹の茎で表した「竹立涌」、立涌に龍が巻きついた「立涌龍」などがございます。
立涌のピンクッション
ピンクッションに仕立てたものがこちらです。
サイズは約 縦6.3cm×横7.5cm、高さ約2.5cmです。
詰め物は羊毛を使用することにより、針が錆びない工夫をしております。
周りはCOSMOの253番でかがっています。
横側です。
針を刺した様子です。
お裁縫箱に入れた様子です。
青や紫の紫陽花の花々で囲んでみました。
青色は静かな美しさを持つお色ですよね。青色は副交感神経を優位にし、心身を落ち着かせる効果があります。
青色は鎮静や冷静、安心、平和、自由、永遠、精神性、誠実、信頼、知性、思慮深さ、真心、直感、神秘、神聖などの素晴らしい意味を多く持ちます。
集中力を高め癒し効果のある青色を使用した、縁起の良い意味を持つ「立涌」のピンクッションです。
おわりに
「立涌」の反転模様を施したピンクッションのご紹介をしましたが、いかがでしたでしょうか。
反転模様を施すデザインは、その時々で新しい発見が多く、どこか不思議な面白さを感じる模様であるように思いますが、菱刺し模様の中には、なかなか反転の表現が難しい模様もございます。
その中で、「立涌」は反転模様が自然に表現される特有の味を持つ模様であるように思います。
「立涌」は一見単調な模様に思えますが、向き合うと向き合う程、その奥深さに感動する模様なのです。
是非、様々な表情を味わってみてくださいね。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
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