菱刺し

【布箱】「月にうさぎ」をイメージした南部菱刺し丸型ピンクッション

菱刺しうさぎ
月は「玉兎」、「兎影」の異称を持ちますが、月にはうさぎがすみ、天満月の夜には餅をつくという伝説がございます。
「月にうさぎ」をイメージし、丸型のピンクッションを制作しました。青森県刺し子南部菱刺しを施し、うさぎの部分には羊毛を用い、布箱に納めました。
月中にうさぎがすむとされた物語の起源や餅をつくとされた由来を綴ります。

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月にうさぎがすむとされた物語の源とは

「月に兎」の物語の起源は、インドに伝わる釈迦の前世物語「ジャータカ」にあるとされます。

日本にも伝えられ、「今昔物語集」に「三獣行菩薩道兎焼身語」として収められています。

内容はこのようなものです。

天竺にさる、きつね、うさぎの三匹の獣がいました。

三匹は、前世で深い罪を負った為に獣に生まれたのだろうと、菩薩の修行に励んでいました。

その姿に感銘を受けた帝釈天は、三匹の誠の心をたしかめる為、年老いた姿となり、三匹のもとを訪れ、養ってくれるように頼みました。

三匹は人を助けられることを喜び、早速食べ物を探しに行きました。

さるは木の実や雑穀、果物を集め、きつねは魚を捕って食料として差し出しましたが、うさぎは一生懸命探しても何も得ることができませんでした。

うさぎは、「野山は恐ろしく、人や獣に襲われ、命を落としてしまう可能性もある。そうならば、自らの身を食料として捧げよう」と決心します。

うさぎは、さるときつねに木を拾い、火を焚いてくれるようにお願いすると、自ら火の中へと飛び込みました。

すると、帝釈天は正体を現し、うさぎの慈悲深さを後世まで、全てのものに伝えるために、月へと昇らせ、永遠にうさぎの姿を残しました。

「今昔物語集」ではうさぎは死んでしまいますが、死んではいないという説や、帝釈天が生き返らせたという説もあるようです。

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天満月に餅をつくうさぎの物語りのはじまりとは

中国の古代神話では、太陽の中には三本足の烏(金烏)が、月の中には不老不死の仙薬をつくうさぎとヒキガエルがすむとされています。

これらの思想が日本に伝えられると、「月のうさぎ」が広く定着したようです。

満月を表す「望月」から「餅つき」となり、月の中でうさぎが餅をついていると言い伝えられるようになりました。

帝釈天のために餅をついているという説もあるようです。

「月にうさぎ」ピンクッション

菱刺しうさぎ
帝釈天が月に永遠にうさぎの姿を残したように、月に見立てた丸型のピンクッションにうさぎを入れてみました。

うさぎの部分は、白色の羊毛を用いて、ぷっくりと柔らかく仕上げました。

瞳は、スワロフスキー・フラットバック・クリスタルタバックを用いました。角度により、キラキラと色合いを変えます。

鼻の部分はラメ糸で施しました。

 

菱刺しうさぎ
コーチングステッチの芯の糸は紅花染め糸、止める糸にはラメ糸を使用しています。

耳のピンク色の部分は25番刺繍糸COSMOの223番を使用しています。

 

菱刺しうさぎ

菱刺し部分の色合いは月夜のイメージです。

25番刺繍糸COSMOの700番、701番、772番、733番、734番、735番を使用しています。

 

菱刺しうさぎ
丸型の布箱は厚紙を組み立て、藍色の麻布を貼り合わせて制作しました。

布箱のはじまりは諸説あるようですが、お茶の茶葉を入れるための茶箱や、蚕や繭を入れて運ぶための布箱など、いずれも品質を保つために考案された紙箱がはじまりと言わます。

それだけ、紙と布で制作した箱にはならではのやわらかさ、やさしさがあるように感じます。

 

菱刺しうさぎ
布箱の周囲は約21cm、直径は約6.5cm、高さは約3.2cmです。

 

菱刺しうさぎ

針を刺す部分は布箱よりも高めになっており、中心部分は高さ約4.3cmです。

 

菱刺しうさぎ
底です。

布箱側面と同じ、藍色の麻布を用いています。

 

菱刺しうさぎ
うさぎさんに見守られながらの針仕事はいかがでしょうか。

 

菱刺しうさぎ
秋月のイメージです。

 

菱刺しうさぎ
月に明かすイメージです。

 

菱刺しうさぎ
プリザーブドフラワーを添えてみました。灯したオレンジ色の光がやわらかです。温かさと閑寂な雰囲気からどこか秋を感じます。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

月にまつわる伝説は多く、古くから詩歌にも詠まれてきました。

満ち欠けを繰り返すその姿はそれだけで不思議なエネルギーを感じますが、月にうさぎがすみ、天満月には餅をつくという物語はより月の神秘性を高め夢も深まりますよね。

月にうさぎがすむとされた起こりは何とも切ない物語ですが、帝釈天が月にうさぎの姿を永遠にとどめたように、月に見立てた丸型のピンクションに白うさぎを入れてみました。

欠けてゆくようで変わらずそこにいてくれる月のような、慈悲深いうさぎの精神のような、そのような優しさの伝わる作品でありましたら嬉しいです。

お付き合いくださいましてありがとうございました。

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