菱刺し

南部菱刺し「梅の花」ソーイングセット。染色と色の持つ意味について

南部菱刺しソーイングセット
青森県南部地方に伝わる刺し子技法を菱刺しといいます。「梅の花」は菱刺しを代表する模様です。
今回は、虹の七色である赤・橙・黄・緑・青・藍・紫系統の色の自然染め糸を使用して制作した菱刺し「梅の花」模様のソーイングセットのご紹介をしたいと思います。自然染め糸やそれぞれの色の持つ意味について綴ります。

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菱刺しらしくカラフルに

南部菱刺しソーイングセット
色感にきまりはなく、色の選び方は自由なものなので一概には言えませんが、南部菱刺しは「カラフルである」と表現され、多彩な色の糸を使用することも多いです。

そのような菱刺しらしさを表現した、虹の七色である赤系、橙系、黄系、緑系、青系、藍系、紫系の七色のソーイングセットを制作しました。

パステル調や渋みのある色合いの自然染め糸を使用し、色とりどりかつ落ち着いた雰囲気を目指しました。

模様は菱刺しの代表模様「梅の花」です。

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虹の七色

南部菱刺し
使用布は1cm角約 縦7目×横8目の白色の麻です。

使用糸は虹の七色である赤・橙・黄・緑・青・藍・紫系統の色の自然染め糸です。

赤に白を混ぜてできるピンクは桜染め、橙の明度と彩度を低くした茶系が柿渋染め、優しい黄色の苅安染め、黄緑の葛染め、水色と藍色は藍染め、渋みのある紫はログウッド染めの糸で施しています。

自然染め糸、そして、色の持つ意味について綴ります。

桜染め

南部菱刺し
こちらは桜染めの糸で施した「梅の花」です。

桜の花からは色付けできない為、開花する直の樹皮や枝を煮出して染めます。

ピンク色の持つ意味

ピンクは、優しさ、愛情、思いやり、幸せ、いたわり、保護、再生、緩和、肯定などの意味を持つ色です。

柿渋染め

南部菱刺し
こちらは、柿渋染めの糸で施した「梅の花」です。

柿渋染めの色素成分である柿タンニンにより、柿渋液で染めたものは日光に当たることで色を濃くしてゆきます。また、柿渋の成分であるペクチンにより、柿渋染めは硬い性質を持ち、定期的に染め重ねることで強度が増してゆくという特徴があります。

橙色の持つ意味

橙は、温かさ、親しみ、朗らか、喜び、協調、創造性、情感、乗り越えるなどの意味を持つ色です。

苅安染め

南部菱刺し
こちらは、苅安染めの糸で施した「梅の花」です。

苅安の黄色色素はフラボンです。苅安で染めた黄色は少々緑みのある鮮やかな黄色です。藍の青色と重ねることで、鮮やかな緑色に染めることもできます。

黄色の持つ意味

黄色は、希望、明るさ、知性、向上心、好奇心、自己実現、客観性などの意味を持つ色です。

葛染め

南部菱刺し
こちらは、葛染めの糸で施した「梅の花」です。

この世界には、緑色の植物が多く存在しますよね。しかし、鮮やかな緑色に染めることのできる天然染料は存在せず、クロロフィルを用いた緑色染色法が考案されるまでは、藍の青色と黄色の染料の重ね染めにより、緑色に染めていたのです。先にご紹介した苅安は、黄色の染料として用いられることが多いです。

緑色染色法は組み合わせる媒染剤により、鮮やかな緑色や黄みの強い緑色などに染まります。

こちらの糸は、葛のクロロフィルを染料として用いて染めたものです。

緑色の持つ意味

緑は、安心、平和、調和、癒し、誠実、堅実、許し、穏やかさ、くつろぎ、自然、再生などの意味を持つ色です。

藍染め

南部菱刺し
こちらは藍染めの糸で施した「梅の花」です。

多くの植物染料は煮出すことにより色素を取り出しますが、藍の色素は水に溶けない為、煮出しても色素を取り出すことができません。ですので、藍の葉を発酵させて水に溶ける性質に変え、藍の染液を作ります。

青色の持つ意味

青は、平和、自然、幸せ、冷静、誠実、受容、くつろぎ、自由、創造性、コミュニケーション、表現などの意味を持つ色です。

 

藍染め
こちらも藍染めの糸で施した「梅の花」です。

藍染めは、染液に浸す回数によって、色の濃さが変わります。薄く染められたものは緑みに、濃く染められたものは紫みによります。

藍色の持つ意味

藍は、直観、感覚、感性、内省、洞察力、繊細、独自の世界、本質、理想、神秘、高貴、規律などの意味を持つ色です。

ログウッド染め

南部菱刺し
こちらは、ログウッド染めで施した「梅の花」です。

芯材に含まれるヘマトキシリンという色素を染料に用います。媒染剤により、様々な色に染めることができます。このことから全ての光(色)を持つ聖なる木として、マヤ族が染料として伝統的に用いてきた植物です。

紫色の持つ意味

紫は、癒し、奉仕、再生、治癒、転機、精神性、霊性、第六感、繊細、個性、自己の尊厳などの意味を持つ色です。

ソーイングセット

南部菱刺し
ソーイングセットに仕立てたものがこちらです。

 

菱刺しソーイングセット
サイズは、縦約13cm(開いた状態は約26cm)×横約15cmです。

 

南部菱刺し
ループは、藍染めの刺し子糸を編んで制作しました。

 

南部菱刺し
開いた状態です。

桜染め、柿渋染め、苅安染め、葛染め、2種の藍染め、ログウッド染めの7種類の糸で施したピンクッション、小物入れポケット、ファスナー付きポケットがついています。

小物入れポケットは縦約8cm×横約6cm、ファスナー付きポケットは縦約9cm×横約12.3cmです。

布は藍色の綿布です。

 

南部菱刺し
ピンクッションはボタンとループでとめる形なので、取り外すことができます。

 

南部菱刺しピンクッション
ピンクッションのサイズは、縦約5cm×横約5cmです。

 

南部菱刺し
裏面です。

ループの部分は、藍染めの刺し子糸を編んで制作しました。

 

菱刺しピンクッション
ループに紐やゴムなどを通し、椅子の手すり部分や手首などに巻いて使用することもできます。

 

南部菱刺し
ご旅行や手芸教室などのお供にいかがでしょうか。

 

南部菱刺しソーイングセット
椅子型の置物に立て掛けてみました。

梅は寒い時期に花を咲かせ、春の訪れを知らせる喜びや希望の象徴とされます。また、梅の花の五枚の花びらは、福、禄、寿、喜、財の五つを意味します。

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おわりに

いかがでしたでしょうか。

今回は、色とりどりの「梅の花」模様を施した、菱刺しらしいソーイングセットのご紹介をしました。

「カラフルである」と表現される菱刺しですが、実際、菱刺しをしていますと、「色」と向き合う機会が大変多いです。

ご紹介したように、色の持つ意味を意識して色を決めてゆきますと、新たな面白さが生まれ、色選びの幅も広がるように思います。

そして、これらの美しい色が、自然のものから生まれた色であることは大きな感動であり、色に触れる喜びをより実感しています。天然染料で染めたものは、正しく自然の恵み、自然からの贈り物ですよね。

わたしたちは多くの色に囲まれて生活しており、洋服選びや装飾、料理、買い物など、色を決める機会が日常に溢れています。

是非、色の持つ意味に注目した色選びを行ってみてくださいね。

お付き合いくださいましてありがとうございました。

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