菱刺しとは、青森県南部地方に伝わる刺し子技法であり、偶数目を拾って刺し連ねてゆきます。今回は矢の羽模様を例に、刺し方から裏の糸処理の仕方についてまでを、綴ってみたいと思います。図案もございますので、ご一緒に刺してみませんか。
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矢の羽模様
図案
「矢の羽」模様の図案になります。
矢の先から眺めた4枚の羽根の形を「矢羽根」といいますが、「矢の羽」は、矢を横から眺めた羽根2枚の形を表しています。
刺し方
今回は、生成り色の麻布に、8本取りの藍染めの水浅葱色の糸で刺してみたいと思います。糸の撚りに心を配りながら刺しますので、撚りの強い糸を使用すると刺しやすいです。
針は、先が丸く、刺繍針よりも太い針を使用します。糸は、絡まらない程の長さに切って使用します。途中で糸が足りなくなったら糸かえしますので、刺しやすい長さをご自身で調節してくださいね。
刺し始まりは、表面から針を通し、糸の端を少し表面に出しておきます。これは、刺し終わった後に糸処理をする為や、裏面で絡まらないようにする為です。
裏面から表面に針を通し、2目拾い、表面から裏面に針を通します。ひと針刺して、またひと針、というように、布縮みのないように、ゆったりと刺してゆきます。
今回は1段目を左から右方向に向かい刺しますが(2段目は右から左に。3段目は左から右に・・・、となります。)、刺す方向に決まりはございませんので、お好きな方向から始めてみてくださいね。
1段目が刺し終わりましたら、次は2段目を刺してゆきます。2目ずらして1段さがり、裏面から表面に針を通します。
段をうつる時は、布が縮まらないように、折り返しの部分の糸に余裕を持つ感覚で引いてください。
布の目を6目拾い、表面から裏面に針を通します。
3段目です。まず、布の目を4目拾います。
4目拾ったら、表面から裏面に向かい針を通し、2目ずらして表面に針を通します。そして、また布の目を4目拾い、表面から裏面に針を通します。3段目まで刺し終わりました。
4段目は右から左へ向かって刺します。そして、2目ずらして1段さがり、5段目は左から右へ向かって刺します。そして、また2目ずらして1段さがり・・・、というように刺し連ねてゆきます。
9段目まで刺し終わるとこのようになります。
13段目まで刺し終わりました。矢の羽模様は、アシガイ(アシガイとは菱の枠のことをいいます)を入れると全25段の模様ですので、半分まで刺し終わったことになります。
呼び方や目数の数え方については、こちらをご覧ください。
14段目を刺してゆきます。13段目を刺し終わった目から、そのまま1段さがり、2目ずらして裏面から表面に針を通します。
15段目まで刺し終わりました。
糸が足りなくなった場合の糸かえについてですが、刺し終わりの糸は、刺し始めと同じように、裏面で絡まらないように表面に出しておきます。
糸をかえて16段目を左から右方向へ向かって刺し始めます。
糸をかえた場合も、刺し始めは糸の端を表面に出しておいてくださいね。
25段目まで刺し終わりますと、矢の羽模様の完成です。
刺し終わりは、また糸の端を表面に出しておいてくださいね。
裏面はこのような感じになります。表面とは逆の模様、つまり、表面の糸の部分が裏面では布の部分となり、表面の布の部分が裏面では糸の部分となるわけです。表面の模様とはまた異なる趣があり、裏面の模様は菱刺しの面白みのひとつであると思います。
裏の糸処理の仕方
菱刺しの糸処理についてですが、菱刺しでは玉止めはしません。処理をした糸が表面から見えないように、表面の糸が刺されている部分の裏面の布の目をすくうようして糸を通し、処理をしてゆきます。
裏面を表面と間違い写真撮影を行ったというエピソードもある程、菱刺しでは裏面の模様も大切であり、糸処理も重要な過程のひとつです。丁寧に作業を施します。
1段目の糸を処理する場合、すぐ下の2段目(6目拾った部分)の裏面の布をすくい、糸処理を行う場合も多いのですが、今回は、3段目(4目拾い、2目ずらして、また4目拾った部分)の裏面で糸処理をします。
優しく糸を引き抜きます。
糸かえをした15段目と16段目の糸処理もします。
糸を引く時は、布が縮まらないように、柔らかく引いてください。
裏の糸処理には、布の目をすくう方法と、あとひとつ、画像のように、刺した部分に糸を通して行う処理方法があります。
刺した部分に糸を通して行う糸処理方法の長所は、裏面の模様をくずしにくい、という点であると思います。しかし、布の縮まりがより少ないのは、布の目をすくう糸処理方法であると感じます。
一時期、裏面の模様がくずれにくい点に魅力を感じて、刺した部分に糸を通して行う処理方法を中心に行っていたことがありました。しかし、布の縮まり具合が少々気になり、現在は専ら布の目をすくう方法で糸処理を行っています。
糸の長い部分を切ったら、糸処理の完成です。
矢の羽模様の完成です。
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おわりに
いかがでしたでしょうか。
刺し慣れますと、すらすらと刺せますが、初めはひと模様ひと模様、大変時間のかかるものです。糸の撚り具合や布の縮みがないようになどは、とても大切なことですが、何より楽しむことが一番ですよね。楽しんで刺しているうちに、理屈よりも感覚で覚えてゆけるものだと思います。
今回は上方向から下方向に向かって刺しましたが、刺しやすさなどにより、下方向から上方向に向かって刺す場合もあります。刺しやすい方向をご自身で見つけてみてくださいね。
なかなか言葉でお伝えするのは難しいものですが、少しでもお届けできましたら嬉しいです。最後まで読んでくださいまして、ありがとうございました。
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