南部菱刺しとは

【南部菱刺し】歴史とその魅力【日本三大刺し子】

hishizashi
青森県の南部菱刺しとは、青森県津軽こぎん刺し、山形県庄内刺し子に並ぶ、日本三大刺し子のひとつです。その歴史と感じる魅力について綴りたいと思います。

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歴史

南部菱刺しの歴史

菱刺しはおおよそ200年前から行われていたと推定されています。当時、農民は自給自足で出来た麻を衣類として使用していました。しかし、麻は目が粗く、寒冷の地に適した衣類素材とはいえませんでした。そこで、その麻布の保温補強の為に刺し子を施したことが菱刺しの始まりです。主に、前掛けや着物の肩袖、ももひき、手甲に施されていました。

時代の流れと共にその模様が図案化され、伝統工芸品として今に残されています。

現在では、カードケースやお財布、スマートフォンケースやポーチなどの小物から、帯や鞄などの実用品、また、タペストリーや屏風などの装飾品まで、その用途は多様化され、多彩な作品が生まれています。

津軽こぎん刺しと庄内刺し子の歴史

こぎん刺しは江戸時代に始まりました。一方、庄内刺し子のような刺し子は飛鳥時代にルーツを持つようです。

こぎん刺しも庄内刺し子も菱刺し同様、布の耐寒性や耐久性を高める目的で、布を分厚くするために刺し子を施したことが起こりです。

いずれも生活の知恵から生まれた美だったのですね。

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刺し子の魅力

日々制作する中で感じるのは、作品が生きているなぁ、ということです。

心のこもった手仕事ならではの温かみ。

そこに、刺し子の持つ深い魅力を感じます。

選ぶ布や糸の色、布の張り具合や糸の引き具合により、決して同じ作品は生まれません。全てが世界にたった一つのだけの尊い作品であり、その時の心が映し出されるのです。手仕事ならではの面白みがそこにあると思います。

ひと針ひと針、ゆったりと柔らかく

様々な美しい刺し子がある中で、私は菱刺しと出会いました。

菱刺しから感じるのは、ゆったりとした美しさです。

例えば、こぎん刺しや庄内刺し子にある「しごく作業」が菱刺しにはないのです。布を詰まらせないように、縮ませないように、柔らかくひと針ひと針刺してゆくので、しごく過程が必要ないのでしょう。熟練された方は、刺し始めと刺し終わりで、布の幅がほとんど変わりません。

しかし、その布を縮ませないように刺すコツを捉えることが、菱刺しを始めて最も難しさを感じた部分でした。

菱刺しには撚りの強い糸を使用し、刺す時も糸を撚らせながら刺すのですが、糸をねじると、どうしても布も縮んでしまうのです。

ですから、布が縮まないように、糸の引き具合や撚り具合の丁度よいあんばいを捉える感性が重要なのだと思います。布の目の大きさも糸の撚り方も布や糸によりけりですので、その時その時の感覚に依るところが大きいのです。

まとめ

・南部菱刺し、津軽こぎん刺し、庄内刺し子は、いずれも布の保温補強の為に刺し子を施したことが始まりであり、北国ならではの生活の知恵から生まれた美であった。

・刺し子は全てが世界にひとつだけの作品であり、手仕事ならではの温かみがある。

・布が縮まないように、糸を撚らせながらも、柔らかくひと針ひと針刺してゆく菱刺しには「しごく作業」がない。そのゆったりとしたおおらかさが菱刺しの魅力。

お付き合いくださいましてありがとうございました。

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