南部菱刺しは、青森県の伝統工芸に指定される刺し子技法です。「梅の花」や「矢羽根」「雉子の足」など、多彩な幾何学模様が特徴です。今回は、桜チップで染めた糸で13種類の菱模様を施したピンクッションのご紹介をします。一部菱模様について綴ります。
スポンサーリンク
桜染め刺繍糸で施した13種類の菱模様
こちらで桜チップでの染色について綴りましたが、染めた刺繍糸を使用し、13種類の合わせて24個の菱模様を刺し連ねました。
茶みのあるピンク色が気に入っております。
裏面です。
表面と裏面は逆さ模様となっています。
表面だけではなく裏面の楽しみも菱刺しの面白さのひとつです。
布は、1cm角縦約11目×横約11目の紺色の麻布を使用しました。
紺色の地に桜染めの糸で施したことで、どこか夜桜の雰囲気漂うように感じます。
菱刺しでは、模様サイズを横の目数×縦の段数と表します。
今回施した模様は30目×15段と22目×11段の模様です。
一部菱模様をご紹介しますね。
綾杉升
「綾杉」は「杉綾」とも呼ばれる模様です。
升形の綾杉から「綾杉升(あいしげます)」となります。
梅の花
菱刺しを代表する模様です。
地域によって「梅の花」を「花の紋こ」とも呼ぶ場合もあるようです。
目の取り方や模様サイズの異なる、様々な表現をされた「梅の花」模様があり、表現のされ方により、丸みのあるものや、もう少しシャープな印象のものなどがございますが、「梅の花」は共通して柔らかさを感じさせる菱刺しらしい模様です。
猫の目
猫の目を表した模様です。
青森の方言で「目」を「まなぐ」といい、「ねこのまなぐ」と読みます。
矢羽根
弓矢を先から眺めた様子を表した模様です。
菱刺し模様の中には、横から眺めた様子を表した「矢の羽」模様もございます。
矢は「的を射る」などの意味を持つ縁起の良い模様です。
昆布
昆布を表した模様です。
菱刺し模様は、上下左右対称のものが多いですが、「昆布」は上下非対称模様となっています。
扇の紋こ
「扇の紋こ」にも様々な模様がございます。
「扇の紋こ」は全体的に華やかでかどばった印象のある模様ですが、こちらは丸みの印象のあるものです。
基本的に菱刺しは、偶数目を開けて刺しますが、こちらは奇数目を開けて刺す部分もあり、そのことにより、丸みが表現されています。
鱗紋
「梅の花」を「花の紋こ」と呼ぶ地域もあるようですが、「鱗紋」を「花の紋こ」と呼ぶこともあるようです。
「鱗紋」は、魔除け、厄除けの意味を持つ縁起の良い模様です。
石畳
今回施した13種類の模様のうち、「石畳」のみ、少し小さめの22目×11段の模様となっております。
石畳は「市松模様」とも呼ばれる模様です。
石畳(市松模様)は途切れることなく続いてゆくことから「永遠」「発展拡大」「繁栄」を意味し、大きなサイズや地刺しの「石畳」模様では、「石畳」らしい続いてゆく様子が表現されますが、小さいサイズの「石畳」はどこかお花のようにも見えて可愛らしいです。
スポンサーリンク
ピンクッション
ピンクッションに仕立てたものがこちらです。
サイズは、縦約5.7cm×横約8.7cm、高さ約2.3cmです。
周りは25番刺繍糸COSMO234番でかがりました。
自然染めの落ち着いた色合いに、化学染料染めの少し濃いめの糸がアクセントになったように思います。
自然染めと化学染料染めを組み合わせることで、それぞれの良さを引き立て合うように思います。
針を刺した様子です。
お裁縫箱に入れた様子です。
季節の流れを感じる音や香り、色などがございますよね。
キジバトは留鳥ですが、日本の北部のキジバトは冬の間は越冬地に南下するので、キジバトの印象的な節の声は初夏の音という印象がございました。
ところが今年は、まだ春の始まりにキジバトのさえずりに出会い、例年よりも少し早いように感じております。
キジバトの声に白鳥の声が重なり、ゆく冬と来る春を共に見つめた風流な朝もございました。
今年は全国的に桜の開花が早いようですが、キジバトも早い春を感じているのかもしれませんね。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回は桜チップで染めた刺繍糸で施しましたが、自然染めの刺繍糸は初めてでしたので、刺していても新鮮で、風合いも違って感じられました。
ピンクッションという小さく限られた中で13種類の24個の菱模様をつめ込みました。
自然染めの柔らかな色合い、そして、由来や意味を感じられながら、菱刺しならではの幾何学模様を楽しんでいただけますと嬉しいです。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
スポンサーリンク
スポンサーリンク