季節は留めることはできなくとも、お花の色を留めることができたなら。そのような想いでクレマチスの花びらを用いて染めを行いました。花びら染めは退色しやすいとされますが、色止めを行い、一年後、染めた布に菱刺しを施し、クレマチスを添えて撮影を行うことができました。クレマチスの花びら染めについて綴ります。
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用意したもの
・染めるもの・・・15gの麻布と7gの綿の刺し子糸を用意しました。
・花びら・・・約65gほど用意しました。
染めるものの2倍以上用意します。色素の薄いものは多めに用意します。
花びらは枯れはじめたものでよいです。また、冷凍保存することもできます。冷凍保存することにより細胞が壊れ、色素が取り出しやすくなります。
・ボウル
・ごむ手袋
・不織布
・温度計
・さいばし
・ディスポン
・お酢(食酢)
・焼ミョウバン
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精錬と濃染処理(下地染)
不純物や汚れを落とすことを精錬といいます。
布と刺し子糸はよごれのないものでしたので、ぬるま湯で簡単に手洗いをしました。
色素はタンパク質と結びつきやすく、タンパク質を含む動物繊維と比べ、植物繊維はタンパク質を含んでおらず、染まりにくいです。そのため、麻や綿の植物繊維は表面にタンパク質を付着させ、染まりやすくします。
この過程を濃染処理といいます。
今回、濃染処理には、市販の濃染処理剤ディスポンを使用しました。
豆汁や豆乳、牛乳で行うこともできますが、その場合、濃度や天候など、扱いの部分の難しさもあり、染まりやすいように開発された濃染処理剤ディスポンを使用することで、少し楽な気持ちを持てたように感じます。
①80~90℃の熱湯1ℓにディスポンを3~4㎖入れます。
②染めるものを入れて、ムラのないように15~20分間ほどよく動かします。
③取り出して水洗いをします。
染める液を作る
染めるものの50~100倍の液(色水)を作ります。
今回は染めるものが22g(15gの麻布と7gの綿の刺し子糸)でしたので、約2ℓの色水を作りました。
①お湯(30℃~40℃)500㎖と500ccのお酢(お酢で色素を出します)を合わせたものに(お湯とお酢は同量です)、不織布に入れた花びらを入れて、花びらの形がなくなるまで、すりつぶすようにもみます。
花びらの色素は熱に弱いので、お湯は30℃~40℃位のものを用意します。
フードプロセッサーで撹拌してもよいです。短い時間で行うことができます。
②500㎖~1ℓのお湯を加えます。(30℃~40℃)
染め
染めるものを湿らせてから、染める液に入れます。
湿らせることで、浸透が良くなり、ムラなく染まりやすくなります。
麻布の染めの様子です。
綿の糸の染めの様子です。
絹やウールと比べ、綿や麻は染まりにくく、すぐには染まりませんでしたが、長く浸しておきますと、麻の布は赤みの紫色に、綿の刺し子糸は青みの紫色に染まってゆきました。
媒染
媒染とは色素を繊維に定着させることをいいます。
焼ミョウバンでアルミ媒染(色止め)を行いました。
媒染を終えてすぐの布です。
一年の時を経て
花びら染めを行いましたのが、咲きほころんでいたクレマチスやオルレア、薔薇の花々の季節が過ぎようとしていた頃でした。
そのため、その年、染めた布と糸をクレマチスの花々と共に写真におさめたいという夢を叶えることはできませんでした。
花びら染めは日光にも弱く、色が落ちやすいので、どれだけ色が残っていてくれるかと不安でしたが、色止めを行い、暗所で保管しておりました所、とても淡い色ですが色を留めてくれました。
そして、一年の時を経て。クレマチスの花びらで染めた麻布に網代模様の菱の枠を刺し連ね、クレマチスのお花を添えて、クレマチスの花と撮影を行うという夢を叶えることができました。
左下のクレマチスは少し退色がすすんでおりますが、そのことにより、透けるような儚い青色を見せてくれるのですね。
自然はいつの時も美しいことを教えてくださるようです。
おわりに
蕾ほころぶの季節が巡りますと、咲くべき時を知るかのように蕾を開かせる植物の神秘に深い感銘を覚えます。
一方で、一輪咲きほころぶごとに季節がすぎゆくようで寂しさも感じますね。
季節を留めることはできませんので、せめてお花の色を留めることができたなら。
クレマチスの花びらを少しずつ集め、憧れのクレマチスの花びら染めを行いました。
クレマチスよりいただいた深い紫色の花びらは、純白の布と糸を淡い青色に染めてくれました。
花びらで染めたものは退色しやすく、その儚さに寂しさも感じますが、色を変えてゆくさまも含めて美しさなのでしょう。
自然よりいただくお色の繊細な美しさ、自然の神秘、自然への感謝を改めて感じることのできた時間でした。
お付き合いくださいましてありがとうございます。
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