菱刺し

【心綴り】青森県南部菱刺し蓮と睡蓮「蓮華」模様【蓮華の五徳、ロータス効果】

青森県南部菱刺し
南部菱刺しは、青森県の伝統工芸に指定される刺し子技法です。青森県津軽こぎん刺し、山形県庄内刺し子に並ぶ、日本三大刺し子のひとつです。

蓮と睡蓮は「蓮華」と呼ばれ、仏教と結びつきが強い花として知られています。蓮華が流るる様子を表現したアレンジ模様のご紹介をしたいと思います。蓮や睡蓮の写真と共に、「蓮華の五徳」など仏教における蓮華について、また睡蓮の名前の由来や蓮の「ロータス効果」などについて綴ります。

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仏教における蓮華

観音様と蓮華
「蓮華」とは、蓮、睡蓮、蓮華草の3種類を呼び、特に蓮と睡蓮は仏教と結びつきの深い花として知られています。

蓮の花言葉は「清らかな心」「神聖」
睡蓮の花言葉は「信仰」「純粋な心」「清浄」
蓮華草の花言葉は「心が和らぐ」「あなたと一緒なら苦痛が和らぐ」「私の幸福」「あなたは幸福です」です。

仏教と深い結びつきのある蓮華らしい大変清らかな花言葉ですね。

 

蓮華
お釈迦様の教え「妙法蓮華経」にも「蓮華」と入るほど、仏教において蓮華は深い意味がございます。

「南無妙法蓮華経」の
「南無」とは、帰依する、帰命する、という意味です。
「妙法」とは、真理のことです。
「蓮華」は蓮の華のことです。

「妙法蓮華経」とは、つまり蓮の花のような真理を説いたお経のことなのです。

「南無妙法蓮華経」とは、蓮の花のような真理を説いたお経に絶対の信をもってよりどころとし、敬うことを意味します。

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蓮華の意味するもの

悟りをひらく
仏様が蓮の上に座られているお姿が描かれていたり、仏像の台座が蓮の花であったりいたしますが、蓮華座の花の下にある泥の世界は迷いの世界、泥に染まらずに咲く華は悟りの世界を意味し、表現されたものです。

蓮の上に座られるお姿は、俗世に染まらず、悟りを開いたことを意味します。

 

未開敷蓮華
観音様が手に持たれる一輪の花は「未開敷蓮華(みかいふれんげ)」と呼ばれ、蓮の蕾が表現されたものです。

完全な悟りを開いた仏様である如来となることを約束されながら、衆生済度の為に菩薩として働いていらっしゃる観音様のお姿を現しています。

 

蓮華
修行を経て悟りを得て開花したことを意味する蓮華を「開敷蓮華(かいふれんげ)」と呼びます。

蓮華の五徳

蓮
「阿弥陀経」に「池の中に蓮華あり、大きさ車輪の如し」とあるように、極楽には蓮の華が咲いていると説かれています。

極楽へ生まれることのできる人の特徴を表したものが「蓮華の五德」です。

淤泥不染の徳(おでいふぜんのとく)

蓮華は泥沼の中から、泥に染まらず清らかな花を咲かせます。

争いや困難がある俗世の中であっても、清らかな心を持ちつづけることができるという教えです。

「泥中の蓮華」「蓮は泥より出でて泥に染まらず」という諺がありますね。

また、蓮華には泥沼にありながら、泥を吸い、綺麗な水をはき、泥沼の泥を浄化する作用があるのです。

これは、正しい信仰に導くことができることを意味します。

一茎一花の徳(いっけいいっかのとく)

蓮華は一つの茎に一つの花しか咲かせませんね。

これは、一つの茎にいくつもの華を咲かせるのではなく、一つの花があることに感謝できる心を養いましょうという教えです。

そして、誰しもが唯一無二の存在であることを意味します。

花果同時の徳(かかどうじのとく)

植物は花が咲く時期と種ができる時期が異なりますが、蓮は花が咲くと同時に実がなる種を持ちます。

実際は、植物学的には同時に種ができるわけではないようですが、それだけ神秘的であることを表しているようです。

このことは、人も生まれた瞬間に仏種を持つことを意味します。

持って生まれた仏の原石を磨き、皆を仏として敬いあいましょう、という教えです。

一花多果の徳(いっかたかのとく)

蓮は一つの花に多くの種を持ちます。

種が新たな花を咲かせるように自分の悟りを開き、多くの人を幸せにできることを意味します。

中虚外直の徳(ちゅうこげちょくのとく)

蓮の茎は、外は硬く、中は空洞になっています。

その茎は太陽に向かい一直線に伸びます。

このことは、「私が」という我を空にして、太陽という悟りに向かい真っ直ぐ生きることを意味します。

眠る花「睡蓮」

睡蓮
睡蓮は名前に「睡」とあるとおり、花びらをとじて眠るお花です。

「睡眠をとる蓮の花」から「睡蓮」となりました。

 

睡蓮
睡蓮は10時頃に開きはじめ、14時から15時頃には花びらをとじて眠りにつきます。

 

睡蓮
15時から18時までが夕方とされますが、光の感じなどから、超自然的な感覚で時間の流れを感じているのでしょう。

植物に寄り添っておりますと、人知の及ぶところではない感覚や、自然界の時の流れがあることを実感します。植物は実に神秘的ですよね。

 

睡蓮
ひとつの茎にひとつのお花。

わずか3日から4日の間、開花と眠りを繰り返し、さいごは閉じたまま溶けゆきます。

美しい蓮華の葉

蓮の葉
清らかな緑色、葉脈、光を受ける様子、水に映る姿、雨水をのせる姿、水面に浮く姿など、蓮華は葉がまた大変美しいですね。

葉の緑に包まれる紅蓮にまた深い趣を感じます。

 

蓮の葉
蓮の葉は水面に浮いている「浮き葉」と、水面から立ち上がった「立ち葉」がございます。

蓮の葉には切れ込みがありません。

 

蓮の葉
新葉はくるくると丸まっています。

 

睡蓮の葉
睡蓮の葉は水面に浮いている「浮き葉」のみで、葉に切れ込みがあります。

光沢があり、撥水性はありません。

白い睡蓮の蕾です。この日、蕾ほころびました。

 

睡蓮の葉
睡蓮の新葉もくるくると丸まっています。

水面に顔を出した蕾が可愛らしいです。開花まであと少しです。

 

 

蓮の葉は撥水性を持ちます。その為、蓮の葉の上に雨が降ると、雨粒がころころと転がり、蓮の葉が濡れることはありません。

水滴が葉の表面に付着した泥や埃なども取り込みながら転げて落とす自浄性があり、蓮の葉はいつも綺麗な状態にあるのです。

 

蓮と水鏡
この自浄性を「ロータス効果」「ハス効果」と呼びます。

 

純粋さや善性の象徴
蓮は泥地や沼地に根を張りますが、葉や花は清らかさを保ち、純粋さや善性の象徴とされます。

菱刺し「蓮華」模様

青森県南部菱刺し
蓮華の神聖で清らかな雰囲気や、その姿でこの世の真理や人生などについてお教えくださる奥深さに心惹かれ、是非菱刺しで表現してみたいと感じました。

蓮華模様は菱刺しにはございませんが、蓮華が流るる様子をイメージした地刺し模様を考え、15種類の色を刺し連ねました。

使用糸はCOSMO813、DMC554、COSMO222、COSMO812、COSMO2034、DMC23、DMC27、COSMO212、Anchor343、COSMO733、COSMO2212、DMC772、COSMO684、OLYMPUS237、OLYMPUS238です。

とぎれることなく水が静かに流るる印象の和紙と蓮の花びらを添えています。

 

菱刺し
蓮の灯りをともしてみました。

道が灯されてゆくようです。

蓮華が伝えてくれること

染まらずに生きてゆくことはできないの?

染まらずには生きてはいけないこともあるんだよ

そのことが悲しかったのです。

染まってゆくことは悲しいね
染まらずにいることはまた不安もあるよね
染まらずにいることは難しいね
ふつうでいたくて染まろうとして。けれども染まれない。そのような哀しみもあるよね

そもそも、ふつうってなにをふつうというのかな

 

蓮の蕾
そのような心に優しく語りかけてくれた存在が蓮華でした

 

蓮の蕾
泥中から清らかな華を咲かせる蓮華

 

蓮
泥中に咲くからこそ清らかなのでしょうか

泥の中にあっても清らかな華を咲かせるのでしょうか

 

ハス
どのような色の世界に溺れていても
真実を見つめる心の瞳
それを忘れずにいられたのなら

魂までは溺れずにいられるような

 

蓮開花4日目
生きやすさとは
染まってゆくことではなく、この世で生きゆくすべを見い出してゆくことであるような

いつしか道が灯されてゆくような

 

蓮の中
ほんのり清らかな香りに

魂が包まれてゆくようでした。

 

未開敷蓮華
浮き葉ひろがる水面の下は泥の世界
いつしか水面よりも高く空へ向かい立ち伸びる葉
新葉はくるくると丸まり時を待ちます

 

蓮の蕾
どこか恥ずかしげに大きな葉を傘にするように立つ薄紫色の蕾は
いつしか葉の高さをこえて
色は赤みを差して開花の近いことを知らせます

葉脈は清らかな緑にのびて
雨水は葉にゆれる

 

雨の蓮
蕾ほころび
ほんのりただよわす純真な香
花びらは空の青を映します

 

とじる蓮と雨粒
ひとつの茎にひとつの華
我を持たず一茎まっすぐに伸びるその下にひろがるのは
水鏡の世界

 


こぼれた花びらは水面をたゆたう
多くの種は悟りの数

 

全てに意味がある
どのような時
どの時も清らかで美しく。

 

 

お付き合いくださいましてありがとうございます。

ABOUT ME
紫季
こんにちは。 紫季(しき)と申します。 青森県南部に伝わる刺し子技法、菱刺しをしております。 ひと針ひと針に、想いをのせて。 あなたの心に世界にひとつだけの菱刺し模様が届きますように。 もう少し詳しく

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