南部菱刺しは、青森県の伝統工芸です。今回は菱刺しの地刺し模様「松笠」を施し、藍染めの布と合わせて制作した眼鏡ケースのご紹介をします。合わせた布は、手紡ぎの糸を藍で染め、手で織り上げる、全行程手仕事の希少な布です。こちらの布について綴ります。
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手紡ぎ藍染めの手織り布
手紡ぎの糸を藍で染め、手で織られた木綿布のご紹介をしたいと思います。
ラオスの田舎では、立地ごとに、雨季の洪水がもたらす川辺の肥沃な土壌で伝統的な農業を行う村や、焼畑農業を行う村があり、綿や藍が栽培されています。
それらの村のひとつ、北部のノイ村では、希少価値の高いアジア綿が育てられています。
短い繊維をしており、手紡ぎに適したアジア綿は、機械での紡績には向かないことから、アジア綿を栽培する農家が少なくなっています。
栽培したアジア綿を手で紡ぎ、自然の素材で染め、手で織り上げるまで3、4ヶ月を要する、全て手仕事の大変希少な布です。
そのノイ村の布の存在を知った時、手仕事である菱刺しと通じるものを感じました。手仕事は長い時間を必要としますが、それだけ想いの籠った温かさがあると思うのです。
そして今回、ノイ村の藍で染められた藍鉄色の「shoku」の木綿布と合わせ、菱刺しの眼鏡ケースを制作しました。
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松笠模様
菱刺しの地刺し模様「松笠」です。
布は、1cm角 縦約11目×横約11目の麻布を使用しています。
糸は、COSMOの167、OLYMPUSの354、Anchorの1039、COSMOの213、COSMOの733、Anchorの343、COSMOの162を使用しています。
「松笠模様」は、松の実を文様にしたものです。
松は厳しい寒さにも耐え、四季を通じて葉色を変えないことから「常磐木」と呼ばれ、吉祥樹とされてきました。常磐とは、永久に変わらないことを意味します。
松と同じく常緑である竹と、寒さの厳しい季節に開花する梅と共に、「歳寒三友(さいかんのさんゆう)」と呼ばれています。松竹梅はおめでたい組み合わせの代表ですよね。
眼鏡ケース
地刺し模様「松笠」を施し、ノイ村の藍染め布と合わせ、眼鏡ケースに仕立てたものがこちらです。
松笠模様を施した段階では淡い印象でしたが、藍鉄色の布を合わせると、お互いを引き立て合い、全体的に引き締まったように思います。
裏面です。
側面です。
外寸:約 縦16.7cm×横7.3cm
内寸:約 縦15.7cm×横6cm
眼鏡は、横幅:13.3cm、縦幅:4cm、テンプル(つる):14.6cmのものです。
眼鏡に直接触れる部分の内布は、柔らかい綿ジャージ生地を使用しました。
ボタンループは、COSMO167(同色の糸)を編んで制作しました。
藍染めは糸を強固にするため、布が丈夫になり、消臭効果や抗菌効果があるとされます。
現在は鑑賞用の作品も多く制作される菱刺しですが、始まりは布の補強と保温が目的でした。
また、青は殺菌作用があるとされる色です。
眼鏡を優しく安全清潔に保護するイメージで制作した眼鏡ケースです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
施した地刺し模様「松笠」は、松の実を文様にしたものですが、どこか木々が立ち並ぶイメージを連想させると感じております。
青い木が並ぶ情景を思い浮かべますと、どこか神秘的で神聖な、清らかな気持ちがいたします。
実際に、布が生まれたノイ村を訪れたことも、布が出来上がるまでの手仕事を目にしたこともありませんが、布を手にしますと、美しい自然の風景や、自然を尊び自然と共に生きる方々が、ゆっくりと流れる時間の中で、手間を惜しまずに制作された様子や想いが浮かぶようなのです。
そのような自然の中で生まれた濃い青の布と合わせたことにより、一層、木々の立ち並ぶ様子や、色彩のイメージが起こるのかもしれません。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
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