南部菱刺しは、青森県の伝統工芸に指定される刺し子技法です。青森県津軽こぎん刺し、山形県庄内刺し子に並ぶ、日本三大刺し子のひとつです。菱模様を連ねて春の大地を表現した作品のご紹介をしたいと思います。冬から春へとうつろう自然の写真と共に綴ります。
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菱刺し模様
横22目×縦19段の29種類の菱刺し模様を、58個刺し連ねました。
糸は刺繍糸を、布は麻布を用いております。
グラデーションをかけ、冬から春へとうつろう様子を表現しました。
上には幹が続きます。

ワイヤープランツを添えてみました。
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春へのみち
人家が取り壊され、人の足も踏み込まない、冬の間、一面雪に覆われた跡地がございました。
生活の音の消えたその場所は寂しげで、それでも雪色から大地の色へと少しずつ移ろう様子は、春へと続くみちを知らせてくれる場所といえました。
大地が覗いては、また白くなり、土の色みが深くなっては、またうっすら白が覆い。
何事もそれくらいの歩調がちょうどよいのかもしれませんね。
そのようにゆっくりと春へのみちを歩んでいた大地も、いよいよ一面土の色が見渡せる季節が巡りました。
眠りから目覚めるように色めく紫の森
花咲く前の幹や枝の紅
海と空の境界をたゆたふ霞の浅紫
生まれたてのあわい緑色
春のはじまりは、その時節だけの特別な色彩に出会える時です。
雪の下、土の中では目にはみえなくとも
時を待ち、一日一日と
春のしたくがなされていたのですよね。
そのような紫を待つ大地に想いを馳せ、菱模様を刺し連ねました。
人の離れゆく大地も、春には新たな命が芽吹くのでしょうか。
種々の色合いの植物が語らい合う大地を想っております。
当たり前のようで当たり前ではない日々の幸せを心に。
お付き合いくださいましてありがとうございます。
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