青森県南部地方に伝わる刺し子技法を菱刺しといいます。こちらでは藍染め糸で施した「松笠模様」のご紹介をしました。松笠模様とは、松の実を文様化したものです。今回はそちらをピンクッションに仕立てた作品について、また、松文様の意味や種類について綴りたいと思います。
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松文様
左:笠松 右:松葉散らし
松は厳しい寒さにも耐え、四季を通じて葉色を変えないことから「常磐木」と呼ばれ、長寿の象徴とされてきた吉祥樹です。常磐とは、永久に変わらないことを意味します。
松の枝や実、葉の形を模した文様が様々あります。松文様を一部ご紹介します。
若松
若々しい生命力を意味します。
老松
年月を経た松を文様にしたものです。枝振りが力強いものが多く、長寿を意味します。
若松菱
若松を組み合わせて菱形にした文様をいいます。菱は魔除けや厄除けの意味を持ちます。
笠松
松の葉の部分が笠のようになり、枝の部分が紐のように線で描かれた文様です。
松葉散らし
針状の葉二枚が一束になっている松の葉を散らした文様です。二枚一束であることから「夫婦円満」を意味します。
松葉菱
松の葉で菱型が作られた文様です。
唐松
松の葉が放射状に開いた丸い文様です。
写真ACからの写真です。
唐松の新芽です。放射状に開いた葉の瑞々しい緑色が美しいですね。
針葉樹には常緑性と落葉性があり、唐松は秋にはなると黄色く色づき落葉する落葉性です。針葉樹で落葉する種類は少ないです。
三階松
松の枝葉を三層に重ねた文様です。二つを重ねたものを「二階松」といいます。
松立涌
立涌の中に松を描いた文様です。
立涌は雲気が涌き立ち昇る様子を描いた文様です。「雲気」が「運気」となり、運気の上昇を意味します。
松喰鶴
松の小枝をくちばしにくわえた鶴の文様です。
松も鶴も長寿の象徴であり、大変縁起の良い文様です。また、鶴は一生連れ添う夫婦愛の強い鳥で「夫婦円満」を意味します。
松皮菱
大きい菱の上下に小さい菱を重ねた文様です。
松の皮の樹皮の割れ方に似ていることに由来し、魔除けや厄除けの意味を持ちます。三階菱の一種です。
菱刺しの三階菱の図案です。
松笠
松の実を文様にしたものです。
藍染め糸で施した松笠模様です。
使用糸は、上から1番目、2番目、4番目、5番目は藍染め、上から3番目はススキ+藍染め、一番下はインド藍染めの刺し子糸です。
4本が撚り合わさった刺し子糸と8本が撚り合わさった刺し子糸を使用しておりますが、いずれも撚りの強い太糸です。
ふっくらとした立体感のある模様が、太糸を使用することも多い菱刺しらしさかと思います。
布は、1cm角 縦約11目×横約11目の白い麻布を使用しています。
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藍染め糸で施した松笠模様のピンクッション
ピンクッションに仕立てたものです。
詰め物は羊毛を使用することにより、針が錆びない工夫をしております。青色の羊毛を使用しており、白色の麻布がうっすら青めいて映る印象です。
周りは同色の藍染め糸でかがっています。
針を刺した様子です。
お裁縫箱に入れた様子です。刺し子やお裁縫、刺繍など、日々の手芸のお供にいかがでしょうか。
深い青の天然石や、浜辺で拾った貝殻を入れた瓶と飾ってみました。
地球の青、空の青、海の青、幸せの青い鳥、「夢叶う」青い薔薇など、世界にあふれる青色は、平和や幸福の象徴の色です。
また、青は心を落ち着かせ、集中力を高める効果のある色でもあります。
おわりに
藍染め糸で施した松笠模様のピンクッションについて綴りましたが、いかがでしたでしょうか。
今回は藍染めの糸でグラデーションをかけて刺しましたが、色種類の多い化学染料染めの糸とは違い、自然染め糸はグラデーションの色の移ろいも規則的ではないのですが、その辺りが自然から頂く色ならではの味であると感じます。
糸の染色方法や模様に関連する意味、色の持つイメージや効果を心に留めながら制作しますと、新たな物語りが生まれ、より作品が深まるように思います。
皆さまも作品にまつわる多くの物語りを紡いでみてくださいね。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
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