南部菱刺しとは、青森県南部地方に伝わる刺し子技法です。
菱刺し模様のひとつに、矢を表現した「矢羽根」と「矢の羽」模様がございます。布箱の四面に「矢羽根」を、針を刺す部分に「矢の羽」を施し、菱刺しらしさや矢に込められた願いを詰め込み制作したピンクッションについて綴ります。
菱刺しの「矢羽根」模様、図案を一部ご紹介したいと思います。
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矢に込められた願い
矢は射られると真っすぐに進むことや、「的に当たる」という意味から、縁起柄とされています。
お正月や、男児の初節句や初正月、上棟式などに飾る神具「破魔矢」は、災いとなる魔を破り、好機を射るという意味を持ち、幸福への願いが込められた飾り矢です。
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菱刺し「矢羽根」模様
菱刺しの矢を表現した模様には、「矢羽根」と「矢の羽」がございます。
矢を先から眺めた時の、四枚の羽根が対角線上に形作った模様を表したものが「矢羽根」です。
矢を横から眺めた時の、二枚の羽根の形を表現したものが「矢の羽」です。
菱刺しには、大きさや表現のされ方など、いくつかの種類の「矢羽根」「矢の羽」模様がございます。
今回は一部の「矢羽根」模様、図案をご紹介したいと思います。
四枚の羽根が表現されています。
こちらが図案です。
こちらは裏面になります。表面とはまたひと味異なる「矢羽根」が表現されていますね。
表面と裏面は逆さ模様となっており、表面の糸で表現された部分が裏面の布の部分、表面の布で表現された部分が裏面の糸の部分となります。
仕立てなどにより裏面は見えなくなっていまうことも多いのですが、それだけ貴重な模様に感じられます。裏面の模様も大切に丁寧に刺してゆきます。
こちらはまた少し表現のされ方が異なる「矢羽根」です。
図案です。
裏面です。
こちらは、先程の「矢羽根」の裏面に表現された模様を表面に施した模様です。
図案です。
裏面です。先程、表面に表現されていた模様がこちらでは裏面に表現されています。
こちらはまた少し異なる雰囲気を持った「矢羽根」です。
図案です。
裏面です。
このような表現も味がございますね。
図案です。
裏面です。
矢羽根です。
図案です。
裏面です。
こちらの「矢羽根」も味がございます。
図案です。
裏面です。
少しまた異なる雰囲気を纏った「矢羽根」です。
図案です。
裏面です。
ピンクッション
布箱の四面に「矢羽根」を、針を刺す部分に「矢の羽」を施した南部菱刺しのピンクッションを制作しました。
布箱の四面は全て異なる「矢羽根」模様となっております。
藍染糸で施しました。
仕立てることで見ることのできなくなる裏面の模様です。
裏面もしっかり四枚の羽根の模様が表現されています。
仕立て前のみ出会うことのできる模様です。
「矢羽根」です。
裏面です。
「矢羽根」です。
裏面です。
四種類の「矢羽根」は、似た雰囲気を持ちながら、少しずつ表現の異なる模様を選んでみました。
裏面です。
針を刺す部分の模様は、矢を横から眺めた二枚の羽根が表現された「矢の羽」です。菱の枠のつかない地刺し連続模様です。
藍のぼかし染めの糸を用いました。
布箱は、2mmの厚さの厚紙で箱を組み立て、「矢羽根」を施した麻布を貼って制作しました。
布箱のサイズは、縦約5.7cm×横約5.7cmです。
ピンクッション部分のサイズは、縦約5cm×横約5cmです。
布箱の高さは約3.8cmです。
ピンクッションの上の部分は布箱より少し高めになっており、約4.5cmです。
底には麻布を使用しています。
針を刺した様子です。
詰め物には羊毛を使用し、針が錆びない工夫をしています。
ギボウシの、すらりと背が高く細い茎に細長く先の開いた花を咲かせる様子がどこか矢を連想させ、ギボウシと撮影を行ってみました。
盛夏の頃よりも自然の色が濃く感じられる季節となりましたね。
光の色にも秋の気配を感じます。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
菱の枠のついた模様は菱刺しならではであり、また、地刺し模様からはより幾何学的な味わいを感じます。
ピンクッションという限られた世界の中で菱形と地刺しのどちらの模様も表現することで、より菱刺しらしさを詰め込むことができたのではないかと思います。
矢の真っすぐさや、込められた幸福への願い、菱刺しならではの矢の模様を感じていただけますと嬉しいです。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
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