南部菱刺しとは青森県に伝わる刺し子技法です。様々な模様の組み合わせで絵を描くこともできます。今回は青海波、鱗紋、菱、石畳と、日本伝統文様を集め、菱刺しで木を描いたピンクッションについて綴ります。また、模様の持つ意味や一部図案のご紹介もしたいと思います。
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日本伝統文様を集めたピンクッション
布は、1cm角縦約15目×横約12目の麻布を使用し、糸はオリムパスの25番刺繍糸を10色使用し、5本取りにして刺しました。
コーチングステッチの芯の糸にはログウッド染め(5本取り)を、止める糸にはラメ糸を使用しています。
木の幹の部分のステッチはバックステッチです。他はコーチングステッチです。
青海波、鱗紋、菱、石畳と、4種類の日本伝統文様を集め、菱刺し地刺しで木を描きました。
仕立てたものがこちらです。
サイズは、縦約6.3cm×横約9.7cm、高さ約2.5cm~3cmです。
詰め物は羊毛を使用することにより、針が錆びない工夫をしています。
周りはコスモ120番(菱を刺した糸と同じ色です)でかがっています。
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日本伝統文様
青海波、鱗紋、菱、石畳、それぞれの模様について、簡単に触れてみたいと思います。
青海波
こちらでは青海波について綴りましたが、今回はまたひと味違う青海波となったのではないかと思います。アレンジ模様です。
上から、オリムパス2015番、オリムパス2013番、オリムパス2011番、Anchor280番、オリムパス562番の5色を使用し、深い緑色から薄い黄色へとグラデーションをかけました。
青海波は「永遠の幸せ」や「平穏な暮らし」への願いが込められた模様です。
インテリア風に飾ってみました。
右側の青色の青海波は「菱青海波」という印象でしたが、今回の模様(左側)は、もう少し丸みのある青海波となったのではないかと思います。
緑中心の配色も関係しているからなのでしょうか、より「和」を感じるように思います。
皆さまはどのような印象を持たれますでしょうか。
鱗紋
上からオリムパス845、Anchor901、Anchor369の刺繍糸を使用し、グラデーションをかけました。
鱗紋は「魔除け、厄除け」の意味を持ちます。
図案になります。
今回施したものは地刺しの鱗紋でしたが、菱の枠のついた模様にも鱗紋がございます。
菱刺しには、模様の表現のされ方や大きさが異なる鱗紋がいくつかございますが、その中のひとつがこちらになります。
こちらも鱗紋です。またひと味違う印象ですよね。
鱗紋に似ていますが、こちらは「蕎麦殻菱」といいます。
模様を考えられた方々の感性は本当に素晴らしいですよね。
菱、石畳
小範囲でやや分かりにくいかと思いますが、緑色の部分は小さな菱の連続模様です。コスモの120番を使用しています。
菱も鱗紋同様、「魔除けや厄除け」の意味を持ちます。
また、木の幹の部分には石畳模様を施しました。DMCの844番を使用しています。
「市松模様」という呼び名の方が耳馴れていると感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、菱刺しでは「石畳」と呼びます。
どこまでも途切れずに続いてゆく様子から、「永遠」や「発展拡大」、「繁栄」の意味を持ちます。
今回施した石畳はこちらです。
他に、四角(布の目の様子により、正方形のようであったり長方形のようであったりします)がもう少し大きめの石畳もあります。
手芸のお供に
針を刺した様子です。
お裁縫箱に入れた様子です。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
ピンクッションという小さめの限られた範囲の中で、いかに種々の色や模様を組み合わせ、絵的に表現できるのかを考え、生まれたデザインが今回のピンクッションでした。
タペストリーや帯などの比較的大きめの作品は数か月、長いものですと一年以上をかけて、一歩一歩進めてゆきます。
それだけ完成した時の達成感も一入ですが、ピンクッションのような小さめの作品は完成までの道筋を思い描きやすいですし、小さめの作品だからこその愉しみもございます。
例えば、大きめの作品に目の細かい布を使用しますと、あまりに完成まで時間を要しますので、大きめの作品に目の細かい布を使用することはなかなか難しいことでございます。ですので、目の細かい布に模様を施してゆく愉しみは、小さめの作品ならではの味わいと感じます。
菱刺しは、ひと針ひと針、布の張り具合や糸の引き具合に心を配りながらすすめてゆく手仕事であり、それだけ願いや想いも一緒に紡がれてゆくのだと思います。日本伝統文様など、模様の持つ意味を心に描きながら刺してゆくと尚更なのではないでしょうか。
いつも純粋な心で菱刺しと向き合ってゆきたい、そのように感じます。
この度もお付き合いくださいましてありがとうございました。
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