厚紙で組み立て、布や紙で装飾した箱を「カルトナージュ」といい、「布箱」や「茶箱」とも呼ばれます。
南部菱刺しを代表する「梅の花」模様を施した麻布と、高知県の民芸布である土佐つむぎ、金振りぼかしの和紙を用いてお裁縫箱を制作しました。青森の伝統刺し子菱刺しを施した布箱について綴ります。
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カルトナージュ
厚紙で組み立て、布や紙で装飾した箱を「カルトナージュ」といいます。
フランスの厚紙工芸で、フランス語で「厚紙」を意味する「カルトン」に由来します。
カルトナージュのはじまりは諸説あるようです。
大航海時代にアジアよりヨーロッパへ伝えられたお茶の茶葉を入れるための茶箱をはじまりとする説や、18世紀頃に南フランスで蚕と繭を入れて運ぶための布箱をはじまりとする説があり、カルトナージュは「茶箱」や「布箱」とも呼ばれます。
いずれも品質を保つために考案された紙箱がはじまりです。
また、ナポレオンが愛する妻のジョセフィーヌへ宝石を入れて贈った、美しい刺繍が施された箱をはじまりとする説もあるようです。
カルトナージュは、組み立てる箱の形や、布や紙の組み合わせにより、その世界は無限に広がります。
主に厚紙と布や紙、ボンド、水張りテープ、カッターなどがあれば制作することができ、身近な素材で世界にひとつだけの独創性の高い箱作りを楽しむことのできる点は大きな魅力のひとつであると思います。
今回、菱刺し「梅の花」模様を施した麻布と、高知県の民芸布である土佐つむぎ、金振りぼかしの水色の和紙を使用し、お裁縫箱を制作いたしました。
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梅の花
「梅の花」は、菱刺しを代表する模様のひとつです。
四隅の小さな菱は、蕾を表現しています。
2種類の藍染めとログウッド染めの糸で施しました。青系と紫の色合いは、季節の花である紫陽花をイメージしました。
麻布はお茶で染めた布を使用しています。
梅の五枚の花びらは福、禄、寿、喜、財を意味するとされます。まだ寒い季節、春に先駆けて花を咲かせる梅は、春の訪れを知らせる縁起の良い花です。
お裁縫箱
2mmの厚さの厚紙を用いて箱を組み立て、菱刺し模様「梅の花」を施した麻布、土佐つむぎ、和紙を貼り、制作したお裁縫箱です。
菱刺しを施した蓋の麻布の部分には、キルト芯が入れ、ふんわりとした風合いに仕上げました。
サイズ:縦約8.7cm×横約11cm×高さ約6.3cm(蓋を入れて約7cm)
内側:縦約7.7cm×横約10.2cm
土佐つむぎは高知県の民芸布です。
本来「紬」は絹糸を使用しますが、土佐つむぎは木綿糸で織られます。
何種類かの染料を合わせて作られる深く渋い色合いが特徴ですが、拘りの染料を揃えることが難しくなったことや、後継者不足により、近年生産中止となり、現在では「幻の土佐つむぎ」といわれる貴重な布です。
土佐つむぎは糊付けされている、固めの風合いの布です。
使用するものにより、糊抜きして使用しておりますが、箱作りには、パリっとした質感が大変適していました。
底にも土佐つむぎを使用しています。
内側は、金振ぼかしの水色の和紙を使用しています。
星屑を閉じ込めるイメージで選びました。
少し黄色がかった白から水色のグラデーションに金色が散りばめられた色合いは、昼から夜への移り変わりを感じさせるようです。
また、和紙の色合いは、紫陽花のガクや花びらのグラデーションも連想させ、菱刺し部分と統一感を持たせるようにいたしました。
ピンクションは、お裁縫箱に固定しています。
蓋の部分の「梅の花」模様と同じお茶染めの布に、藍染めとログウッド染めの糸で施しました。
お裁縫箱の内側の横の長さ10.2cmのうち、約4cm程をピンクッションが占めていますが、仕切りの高さを低くすることにより、側面まで湾曲し、上面だけではなく、広く斜め方向にも針を刺せるように、形を工夫しました。
針が刺さる部分には羊毛を使用し、針が錆びない工夫をしています。
仕立ての関係で、ピンクションの下部には発砲スチロールを使用しています。
高さ約4.5cm、直径約3.4cmのキルト糸や全長約9.5cmのハサミを入れた様子です。
「梅の花」部分の青系と紫色の色合いは、紫陽花をイメージしたものですので、紫陽花を添えてみました。
紫陽花は雨の香りを漂わせ、涼し気です。
おわりに
菱刺しを施した麻布、土佐つむぎ、和紙を用いて制作した、お裁縫箱のご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。
菱刺し模様を表現し、お気入りの布や和紙を用いて、世界にひとつだけの箱が形作られてゆく過程は、大変心ときめく時間です。
紙や布でできた箱には、ならではの温かさや優しさを感じます。
今回の作品は初夏の香りをイメージした作品です。季節を感じていただけましたら嬉しいです。
お付き合いくださいましてありがとうございました。
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